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夜、一人人気の無い街を歩く。 買い物の途中だった、夜食が欲しくなったのだ。 でも、こんな時間じゃスーパーは何処もやってない、少し離れたコンビニまでやってきた。 今日はつかさは一緒じゃない、家の手伝いが忙しいんだって。 また巫女さんやるのかなぁなんて想像して笑った、少しでもつかさの事を考えてないと、寒くてしょうがないんだもん。 コンビニの中に入ると、手近なサラダを物色し始める。 最近のコンビニのサラダは捨てたもんじゃない、いや、むしろ下手な喫茶店なんかよりよっぽどおいしい。 密かに最近ハマっている。 自分でもよく作るけど、夜中なんかはこうやって買出しにくるのだ。 最近はつかさと一緒に来ることが多いんだよね、つかさは見てるだけ、私の顔を見て微笑んでるだけ。 サラダを2,3個放り込んでレジに持っていく。 清算を済ませて外へ出た。 冬の風が、私の体を容赦無く冷やしていく。 今日は、私の手にはつかさの手は握られていない。 愛しい恋人の手は、今日は、ここにはない。 たった一日会えなかっただけなのにね、軽い依存症かな。 最初はこんな風になるなんて、正直思わなかった。 ただ、いつもの様に一緒にお弁当を食べた。 かがみとみゆきさんは委員会の仕事で一緒に昼食を取れなかった、それだけが違っていた。 あと、屋上で食べた、二人しかいなかった。 食べ終わって、つかさに教室に戻ろうと言おうとした時、肩を掴まれて、いきなりチューされたんだっけ。 あれはキスじゃなくて、チューだね、うん。 だけどそれでつかさを受け入れた訳じゃない、実際された時私は怒ったはずだ、つかさを怒鳴りつけた。 からかわれてる、って思ったからさ、いつもだったらおふざけだって思って私も一緒になってけらけら笑ってる所なのに。 でも、その時のつかさ、いつものおどおどしたつかさじゃなかった、私の目をキッと睨みつけるように、一歩も引かなかった。 たじろいだのは、私の方だった。 つかさ「いきなりキスしたのはごめんね・・・・・・でも、好きなんだもん」 相手側からすれば、随分自己中な発言・・・・・・でも、もう私の中に憤りの感情は消えていた。 というより、その時のつかさに圧倒されてしまったんだろうね、きっと。 私は動かなかった、声も出なかった、つかさも、私の目を捉えたまま動かなかった。 今にして思えば、ほんと、何でこんなにつかさに惹かれたのかな。 後で、つかさを受け入れる返事を告げた、断るつもりだったのに。 顔を見たら、答えがひっくりかえっちゃったよ。 その時つかさは初めて泣いた、周りに人がいるのなんてお構いなしに。 瞬間、私の常識も道徳も一気にガタガタと崩れ落ちた、つかさに落とされた。 人が人に惹かれる瞬間って、こんな感じなのかな。 その日からはほとんどずっと、一緒にいた。 私がつかさの家に遊びに行く事もあれば、つかさが家に来ることもある。 でも、今日は、いない。 風が、吹き抜けた。 手に感覚がほとんど無い。 つかさがいない夜、私は初めて実感した。 冬って、こんなに冷たかったんだね。 家まで、遠い。 距離以上に遠くに感じる。 きっと、寒いせいだ、早く家に帰ってコタツに入ろう。 ゆっくり、ゆーちゃんとテレビでも見よう。 不意に携帯が鳴った。 つかさと付き合う様になってからは、私も常時持ち歩く様にしていた。 理由は単純、つかさとお揃いだから。 二人で一緒に機種変した、ストラップだってお揃いだ。 メールだね、着信音ですぐわかる、つかさだ。 今日みたいに、会えない日があればこうやって必ずメールをくれる、もっとも会っていてもよく送ってくるけど・・・・・・。 会えない分、つかさの打った文を見て少しでもつかさを感じようと思った。 メール欄を開いた。 『こなちゃん、今何処にいるの?』 ・・・・・。 瞬間、私の足は勝手に動き出した。 私は家に向かって走り出していた。 さっきまで寒かった私の体が嘘の様に熱くなってくる。 恐らく、いきなり家を訪ねて私を驚かせようとしたんだろう、喜ばせようとしたんだろう。 つかさの考えそうな事だ、でも残念だったね、つかさの思い通りにはならなかったよ。 息を整えることも忘れて、一心不乱に走る。 走る、ひたすらに。 私の家の前、愛しい恋人は、はあ、と手に息をかけながら立っていた。 こなた「つかさ?」 つかさ以外の誰でも無い事位分かってるのに、何故か疑問系になってしまう私。 つかさ「こなちゃん?」 つかさも疑問系で返してきた、むむぅ、やりおるなつかさ・・・・・・。 だけど、おどけ心はそこまでで限界だった。 私は、恋人の体に触れた、冷たいけど暖かい。 包み込まれる、これだ、もう病みつきだ。 暖かすぎて涙が出る、ねぇ、つかさ・・・・・・。 つかさ「手伝い、終わったから来ちゃったよ、お父さん達に許可取るの大変だったけど」 つかさは手をこすりながら言う。 きっと事情を知ってるかがみあたりが援護してくれたんだろうな、会ったら、お礼しとかないとね。 二人で、家の中に入る。 そうじろう「こなた帰ってきたのか?」 お父さんがリビングから顔を出す。 こなた「帰ってきたよ、ただーま」 ゆたか「お姉ちゃんおかえりー」 つかさ「お邪魔します」 そうじろう「中で待ってれば良かったのに」 つかさに対して言っているようだ、一回訪ねたんだ、って、そりゃそうか・・・・・・だから待っててくれたんだもんね。 つかさ「いえ、えへへ・・・・・・」 私の部屋につかさを招き入れる。 こなた「ごめんねつかさ、寒かったよね」 つかさ「ううん、私が勝手に外で待ってただけ」 こなた「でもお父さんの言う様に中で待っててくれれば良かったのに」 心からそう思った。 あんなに寒そうにしてさ。 つかさ「だって、こなちゃんだって寒かったんでしょ?」 こなた「そりゃあ・・・・・・」 つかさ「じゃあ私も寒い方がいい・・・・・・」 そう言って、私の額にぴと、と額をくっつけてきた。 ああ、もう、叶わない・・・・・・。 最近、ずっとつかさに主導権握られっぱなしだな・・・・・・。 二人で体くっつけ合って、つかさは楽しそうに今日の話をした。 私は笑って聞き手に回っていた。 時々相槌をうちながら、私はつかさの顔に見惚れていた。 やっぱり、つかさはこういう笑顔が一番いい。 何せ、この私が落とされてしまったほどの表情なのだから。 時間って、本当に経つのが早い、特にこういう時間は。 既に二時を回っていた。 もうお父さんもゆーちゃんも寝てるんだろうね。 こなた「つかさ、大丈夫?」 つかさ「うーん、ちょっと眠いかも」 そう言って軽く目をこするつかさ。 こなた「寝よっか」 つかさ「一緒に寝ていい?」 こなた「何を今更」 私の家に泊まりの時は必ず二人で寝る。 二人、くっついて寝る。 電気を消す。 二人でベッドに上がる。 枕は一つだけ、もちろん枕なんていっぱいあるけど一つで充分。 いつもの様につかさの手が私の背中に回された。 包まれる、布団なんかよりずっと暖かくて心地良い。 つかさの胸に手をやり、顔を寄せた。 つかさ「今日・・・・・・迷惑だった?」 こなた「何で?」 つかさ「いきなり押しかけてきて・・・・・・」 迷惑? 私が、迷惑? こなた「100%あり得ない」 つかさ「こなちゃん」 こなた「嬉しかった、涙抑えるのに必死こいたよ」 つかさ「有難うこなちゃん」 私の背中に回った手が、少し強くなった。 つかさ「私も、あり得ない」 つかさの目尻が少し、光っていた。 つかさ「こなちゃんの顔を見れない日が、あり得ない」 つかさの言葉一つ一つが、私の心を暖めていく。 これ以上無い位に・・・・・・私は、幸せだった。 つかさ「もう、こなちゃんに触れない日なんて考えられない・・・・・・」 こなた「私も」 もう、のろけでもおのろけでも何でも良かった。 つかさは今、ここにいる、私を抱いてくれている、その事実だけが私を癒してくれる。 このまま寝れば、夢の中でもつかさと抱き合えてそうな、そんな気さえする。 私の唇に、つかさの唇が触れた。 軽い口付け、私は導かれる様に何度も受け入れた。 決して器用じゃない、でも、つかさらしい、そんな口付け。 こなた「何か、眠れなくなりそうだから・・・・・・」 それ以上は、言わなかった。 つかさは頷いて。 つかさ「おやすみ、こなちゃん」 こなた「おやすみ、つかさ」 最後の口付けを交わすと、つかさはゆっくりと眠りに落ちていった。 私の事を、きつく抱きしめたまま。 私はつかさの寝顔に見入りながら、つかさを感じていた。 人を好きになるのに理由なんていらない、ってよく聞くけど、きっとこういう事なんだね。 私にも、睡魔が襲ってきた。 もっとつかさを見ていたいんだけれど・・・・・・と睡魔に講義してみたものの、睡魔は抵抗を許してくれない。 しょうがないか・・・・・・この続きは夢の中で。 ゆっくりと、最後に目を閉じるまで、意識が消えるまで、私の目はつかさを離す事は無かった。 本当に、大好き つかさ ―・・・ 私は、うっすらと目を開けた。 いつもなら昼まで寝ちゃうのに、まだ、光が差し始めたばかり。 時間を見る、まだ6時ちょっと前。 まだ3時間と少ししか寝てないんだ・・・・・・。 こなちゃんは、私の隣で静かな寝息を立てていた。 子供っぽい寝顔が、すごく綺麗だった。 私が、どうしようもない位、好きになってしまった人。 部屋は寒い筈なのに、私はそれを感じなかった。 感じるのは、こなちゃんの体温だけ、それで充分。 もう、放したくない、このままずっと。 ずっとこうしていたいと思う、だけどそれは叶わない、意識が、ぼんやりとしていくのを感じる。 私の意識が、また引き込まれていく・・・・・・。 元々私は寝ないと駄目な方だ、すぐに眉が落ちてくる。 こなちゃんの髪を掻きあげると、額に口をつけた。 好き、大好き・・・・・・。 つかさ「こなちゃん、ずっと傍にいてね・・・・・・」 寝ているこなちゃんに、私の全ての思いを込めて呟いた。 きっと私の言葉は、こなちゃんの見ている夢が届けてくれる。 受け取ってくれた様に、こなちゃんは夢の中で笑ってくれた。 ~fin~ ■作者別保管庫(1スレ目)に戻る コメントフォーム 名前 コメント ホロ甘いです… -- 名無しさん (2009-05-07 16 26 02)
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ゆっくりいじめ系1969 ゆっくりした教育の一部です。 読んでないとまったく分かりません。 青年の家から連れてこられた子れいむはまりさ達の群れに到着した。 今日は新しく自分たちの仲間となった子れいむの歓迎会だ。 大人たちががんばって大量のご馳走を用意した。 「さ、れいむ!いっぱいたべてね!」 しかし促されたれいむは一切反応しない。 「ゆ?どうしたのれいむ?」 「なにこれ?こんなごみよりはやくあまあまなごはんをよういしてね!しゅーくりーむでいいよ!」 事実そこにあるのは虫や生ごみなのだ。 しかしそれは野生のゆっくりにとってはご馳走である。 このれいむは青年によって甘やかされて育った。 最初の一週間ほどは贅沢な生活に満足していた。 しかしご飯も毎日同じものですぐに飽きたて美味しくなくなったし青年もまるで遊んでくれない。 こんな家よりもまりさおねえさんの家のほうがゆっくりできる。 子れいむの頭ではこうなっていた。 「なにいってるの!?これがごはんだよ!ほら。」 ぱくぱくとご飯を平らげていくまりさ。 「…みててきぶんがわるくなったよ。ねむりたいからべっどをよういしてね!」 「ゆ…。」 そんなれいむの反応にめげず寝床へ連れて行く。 しかしそこでもれいむはわがままに文句を言う。 「こんなところじゃねむれないよ!ちゃんとふかふかなべっどをよういしてね!」 青年の家の家では彼が用意したふかふかのベッドで眠っていた。 ただの洞窟に藁ですらない枯れ草を敷いただけのベッドでは満足できるはずも無い。 「それにむしさんのこえがうるさくてねむれないよ!ゆっくりしないではやくなんとかしてね!」 確かに虫の声はしているが野外なのだから当然だ。 しかし青年の家で暮らしていたれいむにはそれが分からない。 結局この日はれいむのわがままを聞いているだけで終わった。 ちなみにれいむは眠れない眠れないと言いながら日が落ちると勝手に寝ていた。 翌日朝早く大人たちが狩の準備をしていた。 「ゆっくりおはよう!」 あのれいむが目を覚ました。 大人子供問わず渋い顔をするものが多い。 このれいむの昨日の有様を見ているのだから当然だ。 「れいむはたいくつだよ!あそびたいからおもちゃもってきてね!それとおなかすいたからあまあまもってきてね!」 「ごはんはちょっとまってね、おもちゃはないけどそとのみんなとあそんでね。」 まりさがれいむに根気強くそう諭す。 しかしれいむはそんな言葉に一切耳を傾けようとしない。 青年の家では少なくとも相手に聞こえた願いはすべて叶えて貰えたのだ。 「おもちゃもないの?ばかなの?しぬの?あんなきたないゆっくりたちとあそんでたのしくないよ!」 大人たちの中には目に見えてイライラしている者も多い。 わずか一晩でこのれいむは群れの大人すべてを敵に回していた。 何とかれいむをなだめすかし狩に出かけたがその間にれいむは自分より小さいゆっくり達をおもちゃにして遊んでいる所を大人に止められた。 それを注意されても。 「おもちゃをもってこないまりさたちがわるいいんだよ!ゆっくりりかいしてね!」 と言って取り合わない。 食事の時間になっても、 「まずいけどおなかすいたからしょうがなくたべるよ!むーしゅ!むーしゃ!げろまず!」 そんなことを言いながら大人三匹分はご飯を食べた。 睡眠時間でも、 「やっぱりむしさんがうるさいよ!まりさはむのうだね!さっさとなんとかしてね!」 そんなわがままばかり言うれいむに群れのゆっくり達は完全にあきれ返っていた。 そしてついに数日後、 「こんなところじゃゆっくりできないよ!おかあさんのところのほうがゆっくりできたよ!」 ついにれいむも我慢の限界を迎えた。 何を我慢したのかと思うかもしれないがれいむにとっては我慢の連続だったのだ。 ついには青年の家のほうがよかったと言い出す始末。 それは事実なのだが勝負に勝ったと思っている群れの者たちにとっては禁句だった。 「いいかげんにしてね、れいむ!そんなにおにいさんのところがいいならおにいさんのところにかえってね!」 まりさがもっともなことを言う。 周りのゆっくり達もいい加減このれいむに付き合うのは限界を迎えていたため口を差し込む者は少しもいない。 「それじゃあれいむたちはおかあさんのところへかえるよ!むのうなまりさたちはゆっくりしね!」 一瞬ほっとしたがまりさだが違和感に気づく。 れいむ…達? 「まりしゃもれいみゅのおきゃーしゃんのときょろへいきゅよ!」 「れいむもだよ!れいむおねえさんのいうとおりここじゃゆっくりできないよ!」 「ありしゅもだよ!」 子供達の一部が口々にそう言い始めたのだ。 教育前の赤ゆっくりや、あまり教育に身を入れていないプチゲス達が大半だ。 実はれいむは同年代か年下のゆっくり達を集めていかに青年の家がすばらしかったかを話したのだ。 「「「「「「「「どおじでぞんなごどいうのおおおおおおお!!!!!」」」」」」」」 そんなことを知らない大人たちは悲しみにくれる。 あれほど自分達が苦労して人間達から救ったのに。 しかしそんな彼女達にかけられるのは冷たい言葉だ。 「まりさたちがにんげんさんよりゆっくりさせてくれるっていうからここにきたんだよ!にんげんさんのほうがゆっくりさせてくれるなんて!まりさのうそつき!」 「ありしゅのしぇいでゆっきゅりできにゃいよ!」 「れいむのせいでおかあさんからはなれたんだよ!もんくあるならもっとゆっくりさせてね!」 この子ゆっくり、赤ゆっくり達も人間に飼われそうになっていた所をれいむと同じような台詞でここにつれてこられた者たちだ。 「ゆっくりさせてくれるから」という理由できたためそれ以上にゆっくりできる場所があるならばここにとどまる理由は無い。 そして大人たちが止めるにもかかわらず子ゆっくり達は半数近くが人里へ降りていってしまった。 あの後れいむの主張に感化されてしまったかなりの数の子ゆっくりが彼女達に合流したためだ。 「ゆううううう…。」 これまでの苦労を思い泣くまりさ。 いったいこれまでの自分達の苦労は何だったのだろうか? 「なかないでまりさ。せめてにんげんさんとゆっくりできるようにいのりましょう。」 そうありすが慰めてくれるが野良のゆっくりがそうそう良い人間に飼われることなど無いことをまりさは知っている。 仮に良い飼い主に出会えたとしても、どれだけいい子にしていても、突然理不尽な理由で捨てられてしまうこともある。 なにせ自分達がそうだったのだから。 まりさ達は悲嘆にくれているがこの事件はゲス予備軍を淘汰できた意味でこの群れにとっては利益をもたらしていた。 しかし「人間よりもゆっくりと一緒の方がゆっくりできる」という群れのアイデンティティーをも破壊してしまった。 彼女達は悲しみながらもこれからも活動を続けていくだろう。 しかしこれまで通りの活動ができるはずは無かった。 「おかあさんのところへいったらあまあまいっぱいたべようね!」 「ありしゅはときゃいはだきゃらきっとにんげんしゃんもやさしくしちぇくりぇるわ!」 「まりさはれいむがいっていたおもちゃがほしいよ!」 もはや寝言の領域に入った子ゆっくり達の妄想は止まらない。 飼い主に捨てられたという境遇こそ大人達と同じものの彼女達は致命的に大人たちとは違う所があった。 れいむ以外は直接人間に会ったことがないのだ。 会ったことがある子ゆっくりは群れに残った。 れいむも知っているのは青年のみ、それもその一面のみである。 ゆえに彼女達が人間に対して大人ほど恐怖を感じないのは必然だった。 無知―――それは霊長たる生物意外が許されるものでは無い。 「なんだぁ?ちびなゆっくりがうじゃうじゃと。」 子ゆっくり達の集団を最初に発見したのは大人達の群れ住んでいる山の持ち主の男だ。 ゆっくりが住み着いていたのは知っていた。 しかし彼女たちの主張を盗み聞きしある種の感動を覚えた男は山にゆっくり達が住み着くことを黙認したのだった。 「ゆ!にんげんさん!れいむにあまあまもってきてね!それとおかあさんのとこへつれてかえってね!」 「ゆっきゅりしにゃいではきゅしちぇね!」 「おもちゃがほしいよ!もってきてね!」 ゆーゆーと男に要求する子ゆっくり達。 教育した大人たちが見たらたいそう嘆くだろう。 赤ゆっくりだけでなく子ゆっくり達まで馬鹿なことを言う。 男はため息をつく。 山から下りてきたように見えたからあの群れの連中かとも思ったがどうやら違うようだ。 群れの子ゆっくりとは何度か会ったことがあるがもっと素直でかわいかった。 実際は教育がすんでいない子ゆっくりは山から出されないため男は群れのゆっくりはいい子ばかりと勘違いをしていた。 「おまえら、少しそこで待ってろ。望みのものは用意してやる。」 「はやくしてね!れいむはおなかすいてるんだよ!」 他の子ゆっくり達も口々に遅い遅いと文句を言う れいむに影響されてこの集団の子ゆっくりたちは早くもゲス化が始まっていた。 「さてと、加工所加工所っと。」 男は携帯電話で加工所への連絡を入れた。 「たすけてれいむ、わふ!!!」 「ありしゅはときゃいはなのよ!ていちょうにあちゅかいなしゃぶふっ!!!!」 「どおじでだずげでぐれげぶ!!!」 次々と加工所の職員に捕らえられていく子ゆっくり達。 「どおじでごんなごどずるのおおおおおおお!!!!!」 一匹の子ゆっくりが叫ぶ。 加工所職員はいつものことなので無視して淡々と作業をするのみ。 代わりに男が説明する。 「彼らは加工所の職員だからだよ。」 「ゆ!かこうじょはゆっくりできないよっておふっ!」 どうやら加工所を知っているらしい野良のネットワークも侮れないものだと男が思っているとあっという間に残りは子れいむ一匹になっていた。 「こいつがリーダー格みたいだな。」 「子ゆっくりや赤ゆっくりばかりなのは珍しいな、親だけ殺されたりしたのかな?」 さすがにこのような事例は加工所の歴史でもかなり少ない。 「はなじでえええええええ!!!!!!れいむおかーさんのところにかえるうううううう!!!!」 「あー、はいはい。」 れいむが青年の言いつけ通りおにいさんと叫んでいれば状況は変わったかもしれない。 しかしそれはすべて後の祭りである。 彼女達は加工所でその短い生涯を終えるだろう。 ぱちゅりーに赤っ恥をかかせて以降、無知だの何だのと言うことは無くなった。 文字を少し教えてやり子供用の平仮名ばかりの本を与えるとうれしそうに読んでいる。 ちなみに俺が三日でいいと言ったのはその間にぱちゅりーを口説き落とす自信があったからだ。 今思うととんでもない自惚れである、我ながらおお愚か愚か。 まりさが温情で一週間にしてくれなかったらぱちゅりーとはお別れだっただろう。 で、一週間ほどして約束の半月の日にいつもの場所へ行ったのだがあいつらは結局来なかった。 れいむは別にどうでもいいのだがあいつを放り込まれた群れがどうなったのかは少し興味があったのだが。 それっきりれいむのことは忘れてしまった。 夜、子ゆっくりばかりの群れが現れたなんていうニュースを聞いても俺にはまったく関係の無い事だった。 修正してアップロードし直そうかと思いましたがストレスがマッハなので別作品にしました。 過去書いたもの 奇跡のゆっくりプレイス 醜い男 生きるための選択 体つきゆっくり愛好家 ありすの戦い 黒歴史 ぱちゅりーの教育 ゆっくりした教育 byデストラクション小杉
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『答え』~こなた~ あの日の夜、 かがみに告白しようと決心した。 そして迎えた月曜日。 「・・・いつ告白しようかな。」 やはり放課後に体育館裏とか屋上? ベタだが今の私にはこれくらいしか思いつかない。 ふっと時計を見る。 そろそろ家を出なければ電車に遅れてしまう。 私は急いで準備をし、家を出る。 いつものように駅前ではかがみとつかさがいた。 「こなた!遅いじゃないの!もうすぐ電車出ちゃうわよ!」 「ごめん・・・」 「なんだか元気が無いけど・・・どうかしたの?」 「ん?なんでもないよ?」 「そう?ならいいんだけど・・・」 一応感付かれないように振舞った。 関係ないけど今日も空気だね・・・つかさ そしていつも通り学校まで向かう。 私は隣にいるかがみばかり見ていた。 (どうやって告白しよう・・・?) かがみの見つめながら考えていた。 (やはり普通に『好き』というのが一番かな・・・) 少なくても何かネタに走るのだけはいけない。 またなんか変な子といってると思われても困るし・・・ ・・・断れたらどうしよう というか普通に考えたら断られるよね・・・ 真面目なかがみだもん。 同性に恋愛感情を持つなんて考えにくい。 ・・・でも それでも自分の気持ちを伝えるんだ・・・ 昨日、そう決心したから・・・ そうして私たちは学校に到着した。 いつも通りの、それでいて私にとっては、 覚悟を決めた一日が始まる・・・ 私は授業中どうやってかがみを体育館裏に呼び出そうか・・・ そればかり考えていた。 少しぼーっとしていたのかもしれない。 「それじゃあここを・・・泉!」 「・・・」 「泉!」 「・・・ぁ」 「どないしたん?」 「ぁ・・・なんでもないです。すいません。」 「そうか。ならいいわ。教科書の243ページの13行目から呼んでくれや。」 「はい。」 授業の後・・・ 「おい。泉。」 「なんですか?黒井先生?」 「お前なんか悩み事でもあるのか?」 「いや・・・特に無いです・・・」 「そうか。」 「はい」 「まぁ何か悩みがあったら遠慮なくいいな。」 「分かりました。ありがとうございます。」 そんなやり取りもあったが結局ずっと悩んでいた。 結局昼休みの間にかがみに直接「放課後に体育館裏に来てほしい」 そう伝えることにした。 そして4時限目 授業は終わりに差し掛かった。 一応考えはまとまったので、 これといってぼーっとすることも無かった。 そして授業は終わった。 お昼休みである。 一応つかさやみゆきさんに聞かれないように、 かがみを呼びに行くことにした。 「かがみん~」 「おぉこなた~」 「お昼ごはん一緒に食べよ~」 「おー分かった。ちょっと待ってて。」 「分かった。」 そしてかがみと一緒にクラスに向かう。 チャンスは今しかない。 (あぁ・・・なんかすごくドキドキする・・・) 別に告白するわけじゃないのにすごくドキドキする。 今こんなんだったら告白する時どうするの私! と・・・とにかく言わなきゃ・・・ 「「あ・・・あのさ」」 同時に両者から言葉が出た。 「あぁ・・・かがみからどうぞ」 「いや・・・こなたからどうぞ」 よく分からない会話が成り立った。 このままではgdgdになってしまって、 かがみに言うことができない! 少し沈黙ができる。 「んで?なに?こなた。」 会話を切り出したのは、かがみだった。 言ってしまおう。 「あのさ・・・かがみん。」 「ん?」 「今日の放課後さ、体育館裏に来てほしいんだけど・・・」 言った。 かがみはどんな反応するんだろう。 「分かったわ。」 うん。その反応じゃないと困ってしまいます。 「かがみは何?」 「いや、私はやっぱいいや。」 「そうかぁ~」 「じゃあ皆でお弁当食べようかぁ~」 「あんたはどうせチョココロネでしょ?」 そしていつも通りのお昼休みを過ごす。 5,6時限目はどんな言葉で告白しようかと考えていた。 素直に好きということにしたが、 どうやってその展開に持っていくか・・・ 悩んでも思いつかない・・・ その場の雰囲気に任せるか・・・ 一応決まった。 とりあえず授業に集中しないと・・・ そしてHRが終わった。 私は速攻で体育館裏に行った。 かがみが来るまでに心を落ち着けておかないと・・・ 「・・・遅いなぁ。」 私が着てから30分。 なんだか長く感じる・・・ 「こなた。」 「・・・あ。」 「『・・・あ』じゃないわよ。あんたが呼んだんでしょ。」 どっかで聞いた台詞だがそんなことはどうでもいい。 「あ・・・あのさ・・・」 「かがみんってさ・・・」 「ん?」 「同性愛とかってどう思う?」 「え?なんで?」 「いいから答えて。」 「わ、私は別に愛があれば性別は関係ないと思う。」 「そうか・・・」 思っていた反応と違う・・・ でも一番気になっていた、 かがみが同性愛についてどう思っているかが分かった。 よし。 覚悟を決めて・・・ 「かがみ。」 「ん?」 ドキドキする・・・ 自分でもどんどん心拍数が上がっていくのが分かる・・・ ドクドクと音が聞こえる。 「あ・・・あのさ・・・」 「私・・・かがみのこと好き!」 言ってしまった・・・ 恥ずかしい・・・ 恥ずかしすぎてかがみのこと見ていられない。 必然的に頭が下に向く。 目線がかがみの足にいく。 「こなた」 かがみの声が聞こえる・・・ 「あのね・・・」 「私もこなたのこと好きだよ。」 「え・・・?」 「私も今日こなたに告白しようと思ったの。」 「・・・」 何故か涙が出る。 嬉しくて涙が出る。 嬉しすぎてその後の会話は忘れてしまった。 「かがみ・・・」 「こなた・・・」 私はかがみを見つめる。 かがみも私と同じように真っ赤だった。 そして抱きしめあう どれくらいの間抱き合っていたか分からない。 でも覚えていることは、、 かがみは暖かかった。 かがみはいい匂いだった。 そしてお互いに見つめあい、 そして・・・ キスをする。 かがみの唇は柔らかく、 キスの味は何物にも例えられないほど甘かった。 唇と唇が離れる。 そしてもう一度抱き合った。 そして・・・ 「そろそろ帰ろうか?」 「そうだね。少し暗くなったし。」 私たちは校舎内に戻った。 しかしそこには人影がない。 「おかしいわね。」 確かにおかしい。 かがみと私がいないなら探していると思ったが・・・ そう思っていると、後ろから、 「わっ!」 「うわぁ!」 「なんだぁつかさかぁ~」 つかさだった。 「どうしたの?つかさ。」 「つかさ先輩だけじゃないッスよ。」 つかさの後ろからひよりんとパティが出てきた。 「どうしたの?三人とも。」 なんだか変な空気が漂う。 ま・・・まさか? その静寂の時を待っていたかのように、金髪の欧米人が攻撃を繰り出す。 「Oh!コナタ!見させていただきましたよ!」 やっぱり・・・ 「「・・・見てたの?」」 「もちろんだよお姉ちゃん。」 「いやぁつかさ先輩になんだか先輩たちの様子が変だと聞いたので・・・」 「こっそりついていったらコナタたちが・・・ねぇ。」 まさかあんな恥ずかしいシーンを見られていたとは・・・ 顔が真っ赤になる。 おそらくかがみもだろう。 というかつかさめぇ~空気の癖にぃ~ 「頼むからみゆきさんには内緒に・・・」 「でもそんなの関係ねぇ♪もうメールしちゃったよ。」 orz つかさめぇ~空気のk(ry まぁそんなこんなありながらも、 私とかがみは互いに思い続けていて、 今日めでたく結ばれましたとさ。 その次の日から周りの人からの質問の嵐だったのは いうまでもない・・・というか半分生き地獄でした。 なぜか黒井先生泣いてたし。 とにかく私は今、幸せです。 終わり コメントフォーム 名前 コメント 黒井先生www -- 名無しさん (2024-05-11 23 13 39) GJ!!(≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-04-03 06 50 09) 面白かったです~。結末が何ともいえないww(いい意味で) -- 柊ただお (2008-10-19 01 55 49) よかったッス(^^) -- 名無しさん (2008-06-24 23 48 32) つかさ空気嫁w -- ハルヒ@ (2008-06-17 23 24 42) その人が幸せなら性別なんか 関係ないってことが伝わってきます -- 葵 (2008-06-16 15 43 20) つかさめ調子に乗りやがって・・・・ -- 名無しさん (2008-06-16 01 29 55) いい話でした。GJ!! -- 名無しさん (2008-06-16 00 51 27)
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『ゆっくりできなかった、ゆっくりこいし』 9KB 観察 希少種 自然界 人間なし 思いつきで申し訳ない 希少種、愛で?、観察?、うんしー 駄文、乱文、尻すぼみ、文章崩壊があるやも知れません。 野生のゆっくりこいしの朝は早い。 太陽がゆっくりと昇り始め、巣穴の入り口の『けっかいっ』の隙間から薄く光が漏れる頃に、動き出す。 自らが居る巣である穴倉の一番奥から、物音を立てないようにのそのそ出てくると、自分が居たところからやや離れたところにある、汚物へと近づいていく。 敷かれた葉っぱの上にこんもりと乗ったうんうんを一口、二口と咀嚼し、飲み込んでいく。 げろまずー、とも言わず、顔をゆがませることも無く、その場で。 これは自身が隠れていた場所へと持っていく訳にはいかない。 理由は、そのゆっくりできない臭いで自分の存在がバレてしまうからだ。 そう、ここはこいしの巣ではない。 本来の巣の持ち主であるゆっくりの一家は、未だすーやすーやとしあわせーな眠りを続けている。 こいしの行動はひたすら静かだった。 ゆっくりには珍しく(と言うか、不自然に)ずーりずーり、とも、こーそこーそ、とも一言も発せず、極限まで気配を消す。 いくらこいしの能力がゆっくり相手に効果を発揮するとはいえ、存在をしっかりと認識されてしまえば、身体的能力で劣るこいしに勝ち目は無い。 故にこいしはゆっくりせず、ただただ隠れながら、生きるために必要な、最低限の行動のみを取っている。 ゆっくりできなかった、ゆっくりこいし ゆっくりこいしとは、希少種の一種であり、その発見は非常に困難である。 ゆっくりこいしは特殊な能力として、『ゆっくりの無意識をある程度操る』事ができるのが、その理由のひとつだ。 簡単に言うならば、ゆっくりこいしは他のゆっくりの家族に、寄生して生きるのである。 ゆっくりこいしを探そうにも、どこを探せばいいのか、どういったゆっくりの一家に多く寄生しているのかなど、まだまだ謎が多く、発見した際の状況にも、人間がゆっくりの一家を虐待または制裁した際に、偶然巣の奥に居たのを捕獲した、というのがほとんどである。 例外として、同じく希少種であるゆっくりおりんとゆっくりおくうが、どこからともなく連れて帰ってきたという事例があるにはあるが。 こいしに視点を戻そう。 こいしは、うんうんを食べ続ける。 ただただ無表情に、むーしゃむーしゃとも言わず、黙々と消化吸収を続ける。 『たくさん』あった山盛りのうんうんの端が削れ、『たくさん』の山盛りうんうんへと変わる。 こいしは知っていた。 いくらゆっくりとは言え、前日の夜までたくさんあったうんうんがあまりにも減っていれば、疑問を抱くことを。 そして、この一家のゆっくりが、それをそのまま『気のせい』で済ませるほど頭の悪いゆっくりではないことを。 故に、必要最低限の食事を。ゆっくりが、その量が減ったことに気づかない程度の食事のみを。 うんうんを食べ終わると、丁寧に口をぬぐい、草の切れ端を食んでその臭いを消す。 ゆっくりは不快感に敏感だ。 僅かな臭いでも、ゆっくりできない臭いを漂わせていれば、すぐに見付かってしまう。 小さく息を吐き、その臭いを確認すると、こいしは隠れ場所である隙間へと這って行った。 すっぽりと隙間に身体を納め、帽子の中から枯れ草を3本取り出し、『かもふらーじゅ』する。 他のゆっくりが自分を認識しないように、安全に眠ることが出来るように。 陽光が森全体をさんさんと照らし、他のゆっくりたちが活動を始める頃、今日もこいしは眠りに付く。 「ゆっゆっ、きょうもゆっくりかりにでかけるよ!」 「いってらっしゃい、まりさ、おちびちゃん!」 「まりちゃはかりのてんっさいっなんだじぇ!きょうもいっぱいごはんしゃんをとってくるのじぇ!」 太陽が真上に差し掛かる前に、巣穴の主であるゆっくりまりさと子まりさは狩りへと出かける。 この父まりさたちを含む群れが縄張りとする森には充分な恵みがあり、いわゆる『ゆっくりぷれいす』であった。 「ゆっゆっ!あのきのみさんは、とってもにがいにがいなんだぜ。おちびはよーくおぼえておくんだぜ?」 「ゆっきゅりりきゃいしちゃよ!」 「こっちのくだものさんはあまあまなのぜ!でも、たねさんはゆっくりできないから、しろいぶぶんだけをたべるのぜ!」 「むーしゃむーしゃ、しあわせぇぇぇぇ!」 今日も森の恵みはゆっくりたちをゆっくりさせてくれていた。 子まりさに狩りを教えながら、父まりさも少し高い位置にある花や木の実を、のーびのーびして取っては帽子に入れていく。 木々の間を気持ちよく吹き抜ける風の中、二匹のゆっくりは跳ね回って『狩り』を続けている。 「おちびちゃん、れいむたちはおうちのおかたづけをするよ!」 「ゆっくりりかいしたよ!」 番のまりさたちが狩りに行くならば、れいむたちはそれをねぎらい、ゆっくりさせてあげなければならない。 母れいむはそう考えていた。 それも、ゲスのような『自分がゆっくりしていれば番もゆっくりできる』というような自分勝手な考えではなく、巣の中を綺麗に掃除したり、お腹を空かせて狩りから帰ってくるまりさたちのために、ゆっくりとした『べっどさん』を整えたりと、相手のためを思っての行為を積極的に行っていた。 「れいむはおといれさんをかたづけるよ!おちびちゃんはゆっくりあたらしいはっぱさんをしいてね!」 「ゆっくりりかいしたよ!」 母れいむはうんうんが山盛りになった葉っぱの茎を口に咥えると、ずりずりと後退りながら巣の外に掘られた穴へとそれを捨てに行く。 その間に子れいむは、固くて食べられないが平らで大きな葉っぱを引っ張ってきて、トイレとして使っている位置に置く。 母れいむに比べればまだ小さい身体だが、一所懸命に働くその姿は、両親をとてもゆっくりとさせるものだった。 「ゆーん!きれいになったね!」 「おちびちゃんがてつだってくれたから、きょうもおうちさんはきれいきれいだよ! べっどさんをたいようさんにふーかふーかにしてもらったら、ゆっくりおひるねしようね!」 「ゆっくりー!」 二匹は枯れ草や鳥の羽で作った寝床を日干ししに巣の入り口へと跳ねていく。 これからゆっくりとした昼寝をしようとする二匹には、トイレ用の葉っぱを敷く時の僅かな風によって偶然『かもふらーじゅ』が壊れてしまい、丸見えになったこいしの姿は映らなかった。 「ただいまーのじぇー!きょうもたっくさんかりをしてきたのじぇ!」 「ただいまなんだぜ、れいむ!」 「ま、まりさ・・・おかえりなさい」 夕方、狩りから帰ったまりさたちを迎える母れいむの様子がおかしい。 妙にそわそわして落ち着きが無いし、それに子れいむの姿も見当たらない。 「れいむ、どうかしたのぜ?あ、といれさんようのはっぱさんがなくなったのぜ?それとも、おひるねしすぎておそうじをわすれてたのぜ?」 「ちがうんだよ、まりさ。…その…おうちのなかに、しらないゆっくりがいるんだよ…」 「…まさか、おちびをゆんじちに…!?」 しらないゆっくり、姿の見えない子れいむと続けば、そう思うのも仕方ないのかもしれない。 父まりさは慌てて跳ねるように巣の中に飛び込むと、巣の中を見渡した。 「おちび!ぶじなのぜ!?ひどいことされてないのぜ!?」 ぐるりと見渡せば、トイレとは反対側の壁に向かって一心に話しかけている子れいむの姿。 ひとまず子ゆが無事なのを確認して安堵のため息をつくと、今度は子れいむが何をしているのか気になってくる。 父まりさはそろーりそろーりと子れいむに近づくと、上から壁のほうを覗き込んだ。 「おちび、なにしてるんだぜ?そっちはかべさんなんだぜ?」 「ゆ?おとーさん、おかえりなさい、ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!…かべさんになにかあるのぜ?」 子れいむが道を譲るように身体をずらすと、そこには…ぷるぷると震え、おびえた目で見るゆっくりこいしの姿があった。 「ゆ?このゆっくりはどこのゆっくりなのぜ?みたことないゆっくりなんだぜ」 「わからないんだよ、まりさ。いくらきいても、ちっともはなさないんだよ。ゆっくりしてないよ…」 「ゆぅ…」 ここですぐさま『せいっさいっ』とならないのは、この家族が善良なゆっくりであるからだろうか。 どうしたらいいのか分からず、家族揃って困ったようにこいしを見つめる中、ぴょんぴょんと跳ねながら子まりさが近づいていく。 「ゆっゆっ!おねーちゃんはゆっくりなのじぇ?おなかすいてるのじぇ?まりちゃがとってきたくささんをたべて、げんきだすのじぇ!」 「おちび、ちかづいちゃだめなのぜ!」 「あ、あぶないよ、おちびちゃん!」 慌てて止めようとするも、下手に動いて刺激したら子まりさが、と思うと大きくは動けない。 そろーりそろーりと近づいて行き、助けるしか無いだろう。 「………」 「こののいちごしゃんがあまあまでおいしいのじぇ!れいむおねーちゃんとはんぶんこしようとおもってちゃけど、おねーちゃんにあげるのじぇ!げんきだすのじぇ!」 純粋で、活発で、ムードメーカーな子まりさは、目の前の見知らぬゆっくりが危険なゆっくりであるかもしれない、ということを考えもしなかった。 単純に、友ゆがお腹を空かせて元気が無いから、そんな感覚で、損得勘定無しに。 それが良かったのかもしれない。 「………」 こいしは、目の前に出された野いちごを小さく齧った。 口の中に、物心付いて寄生を始めてから、一度も味わったことの無いような、瑞々しい甘さが広がっていく。 「……しあわせー…」 本当に小さくつぶやいたその一言は、子まりさを満面の笑みにした。 「じぇ!のいちごしゃんはゆっくりできるのじぇ!こっちのおはなしゃんも、こっちのくさしゃんもゆーっくりできるのじぇ!」 帽子にいっぱい詰まった本日の狩りの成果を、子まりさは嬉々としてこいしの目の前へと広げていく。 これから二匹で一緒にすーぱーむーしゃむーしゃたいむ!と言うところで、 「ちょっとまってね、おちびちゃん!そのゆっくりはゆっくりできないよ!」 「おかーしゃん…?」 いつの間にか、すぐ真後ろに立っていた母れいむが食事にストップをかける。 「どぼぢでしょんにゃこというにょぉぉぉぉ!?」 折角、しあわせと言ってくれたゆっくりに何を言っているのだ、謝ってね! そんな気持ちを込めて子まりさは『ぷくー』して見せるも、母れいむは一向に介せず、もみ上げでこいしを持ち上げる。 「……っ!?」 「ごはんさんは、きれいきれいしてからだよ!びょうきさんになったらいけないからね!」 てっきり危害を加えるものだと思っていた子まりさとこいしは、ぽかんと口を空けて呆けているが、その間に母れいむはぺーろぺーろとこいしの肌を舐めて汚れを取って行く。 父まりさもそれをとがめるどころか、こいしのお帽子を持ち上げて土ぼこりをはたき落として再び被せた。 「ゆっくりしていってね、だれかさん!」 「ゆ…?」 未だに思考が付いていかないこいしは、居心地が悪そうに視線を泳がせる。 「だれかさんがだれなのか、れいむはしらないよ。でも、ゆっくりできるまで、れいむたちとゆっくりしていこうね!」 母れいむも、父まりさも、子れいむも子まりさも、みんな笑顔だった。 みんな、見ず知らずのこいしをゆっくりさせようとしてくれた。 それは、こいしの能力など関係無しに。 ゆっくりできなかったゆっくりこいしは、この日、初めてゆっくりした。 fin. 挿絵:
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ふつらじマスコットキャラを作ろう! ~発表ページ~ ふつらじマスコットキャラを作ろう!の発表ページです。 たくさんのご応募ありがとうございました~っ!! ※五十音順 ※本企画は投票で1キャラに決める企画ではなく投稿を紹介する企画になりました。 【 キャラクター名 】DJ ダークメタモルフォーゼドラゴン 【 キャラクターについて一言(アピール) 】 さいきょうなので、だれもかてません 【 キャラクター名 】:徳川オセロット 【 キャラクターについて一言(アピール) 】: カッパの姿というのは、人それぞれのイメージで描かれていると思います。ふつらじDJの中でも聴いたことがない人は、放送中のレスやテンプレなどを見て自分の中でイメージをしていることもあると思います。そこから真の姿を見るために放送を聴くリスナー、真の姿を見つけるためにカッパを探す人々。この事が似ていると思いカッパをモデルにしました(もちろん、カッパは私の中のイメージですが)。ちなみに、胴体はキュウリに思われがちですが、バトンなのでお間違いなく。 また私は絵が下手ですが、「絵がダメな人でもふつらじマスコットに勇気を出して応募した=トークが下手だけど勇気を出してふつらじで放送を始めてみよう」という新人DJさんへのきっかけになっていただければ、これほど嬉しいことはございません。(制作者:ふつらじ界の若松勉) 【 キャラクター名 】バトン徒郎 【 キャラクターについて一言(アピール) 】 飽きっぽい性格で、ディアゴスティー二―の週刊シリーズの創刊号だけ色々持っている。最近、レクター博士をかっこいいと思ってしまう厨二な自分にとまどっている。ウィスコンシン州で、電気屋を営んでいる親戚にコンプレックスを抱いている。FMラジオ局に務めるのが夢。体は赤いが、スパイダーマンよりヴェノムの方がかっこいいと強調したがる。ハイスクール時代に無二の親友と女友達を取りあったことが、彼の心にちょっとした傷を残した。 【 キャラクター名 】:ふつらじ君 【 キャラクターについて一言(アピール) 】: 潜在能力ははんぱない。 , -ァ'´ ̄二ニ=-=ニ二 ̄`ヾヽ { { / BL `ヽ } } V∨ ,┐ ,┐ ムヘ/ / り り 、 ヽ ,イ ,イ / ̄`ヽ / ̄`ー-' } li // { `ー'´ __ -‐-∨'´ ̄` ー-イ !} .{ { ト ニ二_ --‐大´ ̄` ‐ブ !}{ { ヽ、___,/  ̄ ̄´ リ よくぞ放送してくれた ヽヽ ||| /′ 褒美としてふつらじで放送する権利をやろう \ .||| / \ 湯切り口 / ☆ /ヽ、--ー、__,-‐´ \─/ / ヽ▼●▼ \ ||ー、. / ヽ、 \ i |。| |/ ヽ (ニ、`ヽ. .l ヽ l |。| | r-、y `ニ ノ \ l | |ー─ |  ̄ l `~ヽ_ノ____ / ̄ ̄ ̄ ̄ヽ-'ヽ--' / ふつらじ /| .| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|/| | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|/| ______ / ̄ふつらじ /|  ̄|__」/_ ふつらじ /| ̄|__,」___ /| | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|/ふつらじ  ̄/ ̄ ̄ ̄ ̄|/ ふつらじ /| / .| | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|/l ̄ ̄ ̄ ̄| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|/| / | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| 百合大好き ヽニ=^ヽ ヘ二ニッ .l゛゛! ,,,,,,, ( (´ ,,,....,, ┌、 ` .| | |,,||,,|  ̄Ζユ ,, ,、ヽ`、ェ;、 ヽニ''ニ-ー、ヽ .| l゛,,-ニ,,!-、 .| |  ̄_Ζ_」 { ` r-J }l,_l _,,ノ ノ ,! ゛/゛ `゛l ゛l .| | ,l''ッ . /┌―┐ ´ `'ー''´ -=' - ' ´ ゛‐'` _ノ ," | ゛l、 ,,/丿 |_____」 'lニ二-'" ゛-二ニ-'′ 【 キャラクター名 】ふつらじ戦士ワクテカマソ 【 キャラクターについて一言(アピール) 】: 次DJにワクテカしながら踊ったり、落ち込んだらあれを歌ったりします。 今日もまったり進行なふつらじの平和を守ったり守らなかったり。 初心者さんでもラジオに挑戦だ! ♪ ∧,_∧ だから、次のDJにもwktk ((( ´・ω・`) っつんてんだろー!! __ 〃`ヽ〈_ . . γ´⌒´--ヾvーヽ⌒ヽ- ,, 落ち込んだらあれを歌おうぜ! /⌒ ィ ./\ ); `ヽ- ,, / ノ^ 、_| 普 | ._人 | . "- ,, ! ,,,ノ爻\_. \/_ノ_ ))) \, | _ \ヘ、,, _(_と____\_/ ヽ,, |ヽ_/ \)ゝ、__,+、__rノ ̄ \ | ヽ、____つ_)─┬〈 "-., | /. | リ |, | ゝ | (( /"" | レ.| | ミ | レ | |.| リ "- ,, | / ノ.|__| | "- ,, .| | ,, ソ ヽ ) ,,,-ー" | .,ゝ ) イ ヽ ノ ,,,-ー" .| y `レl 〈´ リ ,,,-ー" | / ノ | | / """" l ̄ ̄/ l ̄ ̄| ,,,- 〉 〈 `ー-ー-| |-ー" / | (_ \ (__ノ \___) 【 キャラクター名 】ふらすきー500 【 キャラクターについて一言(アピール) 】 ふつうのねこ。なぞのじんぶつミスターXもいるよ! 500はわんこいんってよむんだって! ぱくりじゃないよ! ( X ) ,.ヘ__ヘ し─J (^ω^U) わんわんお! u,__っ) 【 キャラクター名 】もっちん 【 キャラクターについて一言(アピール) 】 すっごいのびるよ! ._,,(~),,_ / ・ω・ヽ {i i i i i i i i i} 【 キャラクター名 】ひぐま 【 キャラクターについて一言(アピール) 】 聴いて、レスして、放送しよう! みんなダイスキふつらじを、 一匹のわんこで表現してみました。 下記投票結果により名前が決定しました!! ひぐま 35 (43%) ふつらべろす 23 (28%) スラッシャー板尾 6 (7%) 犬書きたかっただけだ朗 6 (7%) トライくん 3 (4%) 名犬フツラッジー 3 (4%) きょうのわんこ 2 (2%) 庶犬三(しょけんさん) 2 (2%) ふさとりお 1 (1%) パトラッシュ^^ 1 (1%) 投票総数 82 ※3/31以降の投票は無効になっています。 ⊂ミ⊃^ω^ )⊃ アウアウ!! な番外編 【 キャラクター名 】ふつわん 【 キャラクターについて一言(アピール) 】 犬です。中に人はいます。 【 キャラクター名 】:ハルちゃん 【 キャラクターについて一言(アピール) 】: かわいくかけました
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お気に入りに追加する 実況者一覧へ戻る 実況者名 実況チャンネル等 実況者の概要・特徴等 実況者の人物像 これまでに実況したゲーム おすすめ動画 コメント このページのタグ 選択肢 投票 応援してます! (8) 実況者名 わんぱく坊や 実況チャンネル等 [部分編集] 【YouTube】 わんぱく坊や チャンネル登録よろしくお願いします🌟 【Twitter】 【Tiktok】 こちらもフォローお願いします🌷💕 実況者の概要・特徴等 [部分編集] 名前から男と疑われるが、中身は女である。ゲームだけでなく、ASMR等も幅広い動画を投稿している新人YouTuber。20代OLを売りにしているつもりだがあまり影響は無いようだ。ゲーム自体は得意ではなくぎこちないトークと操作を楽しむ事ができるだろう。小学校の時やっていたスマブラがやりたくなり、ついでに実況を始めたらしい。たまに犬も出てくる。 ⭐️アイコンがリニューアルしました。 実況者の人物像 [部分編集] ゆるい喋り方でわんぱくとはかけ離れた性格。 友達が少ない。 これまでに実況したゲーム [部分編集] 大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL,ATRI -My Dear Moments-,LOSTJUDGEMENT,マリオパーティ,青鬼 おすすめ動画 [部分編集] コメント 実況者様へ応援メッセージなどを送ろう! 名前 このページのタグ YouTube ゲーム実況 ゲーム配信 実況者のページ 視聴者とプレイ 実況者一覧へ戻る このページを編集
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前 気がつくと帰宅していた。 日はすでに落ちている。薄い闇が段々と濃くなっていた。日暮れ前には帰るつもりだったのにこんな時間になってしまったのは、今の私が手ぶらであることが理由になっている。 目当てのものが手に入らなかったため、知らぬ間に深追いしてしまったのだろう。こんな体たらくはほとんど経験したことがない。いつもは簡単に捕まえられるのに。 しかも、手ぶらということは、出かける前に持っていったものも無駄に使ってしまったことを示している。何て失態。また作らないといけない。その手間を考えると気が重い。 いや、それ以上に、積もり積もったものは何も変わらず、相も変わらず覆い被さっているのが、とにかく重い。……重い。 扉を開ける手に疲労感がまとわりついている。そして、まず鼻が身構えるのがわかる。じめじめとした天気が続くこの頃だ。中では生々しい臭いが息づいているだろう。一度外出してしまうと、「慣れ」はリセットされてしまうのだ。 滅入る気持ちを奮い起こして、中へ入る。 明日。とにかく明日だ。今日を耐えきってしまえば、また明日出かけることができる。今度こそ捕まえられる。 早くあの子に晩ご飯を作って、身体を洗って、寝かしつけてしまおう。汚れたところをふいて、散らかったところを片付けて、私も早く寝てしまおう。機械的な作業を機械的にやってしまばいいだけだ。それで…… …………? 何だろう。妙な違和感が玄関にまで流れてくる。 あの子が何かしたのだろうか。昼寝から覚めて、一人で遊んで、ということまでは予想できる。部屋の鍵も閉めてある。粗相などはその範囲で収まるはずだ。 そうじゃない。もっと違う何かが起こっている。 そう言えば、さっき私は玄関の鍵を開けただろうか。既に鍵は開いていなかっただろうか。外の地面はパラついた小雨で湿っていたが、玄関には私が入ってくる前に足跡がついいていなかっただろうか。 違和感の正体がわかった。気配がするのだ。まさか、泥棒か。 取られるようなものはないが、だから安心、というわけでもない。 恐る恐る靴を脱ぎ、慎重に気配の発生源を探ろうと、まずは居間をのぞいた。 「うーうー!」 いきなり発見してしまった。 膨れた顔に短い手足。頭の白いキャップ。同色の寝間着のような服。 「う~♪ うぅ♪ う~♪」 レミリア種のゆっくり。しかも胴体付きだ。 なんて珍しい。今まで多くのゆっくりを見てきたが、手足があるのは初めて見た。 近づいていくと、そのゆっくりはこちらを見上げてくる。 「どこから入ってきたの?」 「うー、ざくやー、ぷでぃんもっできでー、ぶでぃんー」 あらあら。会うなり人間違いをして、その上おやつを要求するなんて。 頭を撫でながら、尋ねる。 「あなた、どこの家の子? 森から来たの?」 「うー、れびりゃのおうぢはここだどー」 鼻にかかったようなダミ声で、人様の家を所有宣言。 ああ、何て、かわいいんだろう。 「ぞでよりぷでぃん、ぷでぃ~ん!」 「欲しいの? プリン」 興奮を内に秘めて、荒くなる呼吸を抑えて、にこやかに問いかける。 「はやぐー! もっでごないと、たべじゃうどー」 「じゃあ、たくさん食べてね」 私は少し身体を離すと、思いっきりゆっくりの腹を蹴りこんだ。 ぐごぎょ、と無様な音を喉から漏らして、饅頭は吹っ飛び、壁にしたたか身体を打ち付けた。 「…………! …………!」 痛みで呼吸もままならず、叫び声さえあげられないようだ。何が起こったか理解もできないだろう。 「ぐっ、ぼッ、……! ごぶぇ?!」 ようやくひり出すような息を吐く。私はにこやかに問いかける。「大丈夫?」 「なっ……なにずん……だどぉ」 見たところ腹に外傷はない。意外に丈夫なようだ。嬉しい。 「あら、食べたいんじゃなかったの?」 「ぢがっ、うどぉ……、れびりゃがほじいのは」 再び足を腹に叩き込む。口から出るはずだった言葉が、衝撃で肺に戻される。 何度も蹴りこむ。後ろは壁だ。暴力は逃げることなく全て身体に突き刺さる。 ゆっくりは小さな手足で必死に身を守ろうとしている。その手足さえ、蹴れば柔らかな感触を跳ね返してくる。それがとても心地よい。 たくさんの蹴りを食らって、ゆっくりは痛みか恐怖かその両方かで震えている。頬を引っ張り、何か言うまで待つ。 「んー、どうしたのかな?」 「ぎゅ、んぐっ」 まだ返事はできないようだ。頬をつまんだまま揺すり、引っ張り上げる。結構重い。普通のゆっくりなら頬がちぎれてもおかしくない重さが掛かっているのに、そんなことはなく痛がる様子を見せるだけだ。本当に嬉しくなる。 頬を手放すと、再び床に転がる。そして、ずりずりとはいずるように、逃げようとする。 私は左の二の腕を踏んで阻止する。それでもゆっくりはジタバタと動くが、完全に縫い止められてそれ以上どこにもいけなくなってしまう。ああ、何て弱く、馬鹿な生き物なんだろう。 体付きがどれだけの強度を持ってるのか興味が湧いてきた。踏んだ足に体重を掛けてゆく。伝わってくる響きは、腕のきしみか、それともゆっくりの叫ぶ声が振動となっているのだろうか。 「うふふふふ」 ついに全体重が乗ってしまった。それでもちぎれることはない。ある程度の反動をつけて踏み直してみても、激痛にほとばしる声が高くなるばかりで裂け目一つできない。 「そろそろあなたの中身が見たくなってきたわ。ね、見せて。ね? ね!」 今度は足を上げて、思いっきり勢いをつけて踏みつけてみる。何度も何度も踏みつけてみる。騒音としか聞こえない濁音混じりの絶叫が相変わらず耳に心地よかったが、腕の損傷につながらないのも相変わらずだった。 私は次第に自分の思い通りにならないことに腹が立ってきた。一方でそれがまた嬉しさをかき立てる。苛立ちは最高のスパイスだからだ。 もう一度腹に一撃を見舞った後、私は台所から目当ての物を持ち出してきた。これなら。 「じゃ、改めまして」 ゆっくりを仰向けにして、今度は右腕をつかむ。私が振り上げた包丁に目を丸くしてるけど、何を意味してるのかわかっているのかしら。 私は笑ったまま、思いっきり力を込めて一撃を振り下ろした。 「ぎひう゛ぉギょをぉおごぉおおぉおおぉおおおッ!!」 声帯を無視したような叫びと共に、赤い汁が散った。 中身が何か辛い物でできているゆっくりがいると聞いたことがあるけれど、これがそうなのだろうか。綺麗な色。興奮するわ。 「もっと、もっと見せてね。ふふ、うふふ、あははははっはははっ!」 楽しさを爆発させ、感情に行動を任せる。何度となく、包丁を叩きつけるように切り込んでいく。だが、切り傷が数を増やすのみでなかなか切断できない。切断したいのに。切断したいのに! 早く切断しなさい! 「これでどうっ? これでッ! ほらっ! ほらッ!!」 一番深いくぼみができたところに、逆手で持った包丁の先端を何度も打ち込む。狙い通り、裂け目が大きくなってきた。いいわね、いいわ! 「すごいわね、ほら、取れちゃうわよ、取れちゃうわ、ほら、ほらっ、ねッ!」 そして、ブツンという手応えと共に、ついに腕は根本から切断された。突き抜けるような快感が私の身体の中心を走る。 「ああ、取れちゃった! あははは! 中身は……ふふ、やっぱり肉まんかな? 辛そうだけどね、アハハ、アハハハハハハ!」 中身はかなり詰まっているようで、切断面からこぼれ落ちるのは肉汁ばかりだ。見ていると、柔らかで身の締まった肉汁たっぷりのステーキを連想させる。もしかするととても美味しいのかもしれない。他のゆっくり同様、食べるつもりは全くないから捨てるだけだが。 「……?」 ふと、私は気づいた。ゆっくりの反応がない。 「うそ!」 慌てて確認すると、良かった、死んだ訳じゃないようだ。痛みと恐怖で気絶しているだけらしい。白目をむいて泡を吐いているから驚いてしまった。安堵のため息をつく。水でも掛ければ意識を取り戻すだろう。殺すまでしてしまってはいけない。それはいけない。 まだまだ私に付き合ってもらわないといけないのだから。 私はこれからの楽しみを前にして、身体が喜びで震えるのを感じた。 …………やり尽くした後。 私は居間全体に飛び散った肉汁を前に、包丁をまだ一応の形を為す残骸に突き立てた。 四肢の欠如した胴体は、腹が割り開かれて中身を見せている。赤いソーセージのようなものが出てきたことから、形は違えどやはり肉まんの一種であるようだ。包丁はその中身に埋もれるように収められている。 頭部は両の目がえぐられ、鼻はそがれて豚のようになっている。口は両側が耳まで裂かれて、ピエロのようだ。そんな状態になっても、素手で中身をかき混ぜてやるまで、生きて叫んでいた。 あんなに生命力があって、あれほど長い間楽しませてくれるなんて嬉しい誤算だ。この近くに手足付きのゆっくりが住み着いたということなら、こんなに喜ばしいことはない。何かの神様に感謝した方が良いのかしら。 ただ、砂糖水を掛けても回復しなかったのは残念だった。肉まんだから塩水の方がいいかと思って、掛けてみたら酷く痛がった。だから、もっと掛けてやった。塩そのものもすり込んでみた。それはそれで楽しかったから良しとしよう。 片付けは大変だ。特に肉汁の量が半端ではない。けれど、この気持ちに浸りながらの掃除なら楽しくやれそうだ。 それにしても、この肉汁、辛子か何かで赤いのかと思ったが、そうではないかもしれない。特有の刺激臭がしてこない。食べるわけではないから味はどうでもいいのだが、何か気になる。今になって、どこでかいだ臭いであるように思えてきたのだ。馴染みのある臭い。でも、食べたことはないように思う。何だろう。 考えを巡らし頭をひねると、ふと、部屋の扉が開いているのが目に止まった。 ゆっくりの繁殖方法は、今のところ二通りのものが大勢を占めている。裸子植物タイプと胎生タイプだ。 ほとんど見かけないが、他に確認されているものとして、被子植物タイプ、両生類型卵生タイプ、分裂タイプなどがある。 自分の場合はどれでもなかった。気がつくと、岩穴の中にいて、傍には固い殻が散乱していた。 ということは、鳥類型の卵生タイプなんだろうか。しかし、親は近くにいなかった。爬虫類型の卵生タイプかもしれない。あるいは昆虫型か。 ともかく、最初に起こった欲求は「自分が何者なのか知りたい」ということだった。 何しろ生きる指針を与えるべき親も同族も見あたらないし、そもそも自分が何かがわからなければ種としての振る舞い方も想像できない。「吾輩は猫である」とか言えたらまだ良かったのだが。 かくして、『黒いゆっくりの自分探しの旅』という全くもってモラトリアムな劇が幕を開けるわけだ。そのうち盗んだバイクで走り出すかもしれないな。 いや、自分がゆっくりだと見当がつくのは、もう少し後だ。 とりあえずは魔法の森と呼ばれる場所を、草や木の実やら虫やらを口に含みつつさまよっていた。その中で、ゆっくりを含めた妖怪やら人間やらに出会ったりして。まあいろいろだ。 それでもまだ自分が何かわからなかったわけだ。まあ今になってもそうなんだが。ただ一応の手がかりがつかめたのが、大図書館に滞在したときだったな。 とあるツテでね、来客というか珍獣扱いで招かれたというか持ち込まれた。そこの主たちの好奇心を満たすことと引き替えに、しばらくお世話になったわけだ。 生まれたてで言葉を解していたように、文字も読むことができた。何故かは知らないが、とにかく読めた。それで色々調べることができた。さまざまな妖怪、動植物、外の世界のこと……。館長や司書との会話も有益だったな。 かなり充実した時だった。時間も忘れるとはあのことを言うのだろう。疑問符が好奇心呼び、興味が謎を喚起する。知識の岐路は際限なく奥地まで……ああ、いやいや確かに寄り道はたびたびしたが、第一義は忘れてない。自分のルーツだ。うん? その割には無駄知識が多い? そうかな? で、俺の出生について立てた仮説なんだが――ああ、まだ推測なんだ――どうもゆっくりと他の妖怪との合いの子らしい。 まず俺の身体だが、見事なまでの一頭身だ。顔だけオバケだな。 ゆっくり以外にも首だけの妖怪は多々いるが、大首にしてはお歯黒を付けてないし、チョンチョンにしては耳が大きくない。その他分析してみても、十中八九ゆっくりの血を引いているという結論に行き着く。どういう種のゆっくりかはわからないがな。 もう一方の親は、バック・ベアードである可能性が強い。聞いたことがない妖怪だって? 光化学スモッグの化性で、真っ黒な球体に一つ目がついたデザインなんだが。ああ、そもそもスモッグを知らないか。 ともかく、そういう妖怪だ。空中に巨大なそれが浮かんでいて、わはははと大きな笑い声を上げるのは、まったく恐怖だろう。 能力は主に目から発せられ、相手の精神に作用を及ぼすようだ。軽い幻覚から死に至るものまで、能力の幅はそれなりにある。 自分が羽も無しに宙を飛んだり、片目が不自由であったりした理由が、これで一応説明できるわけだ。体色や表皮などの特徴も含めてな。 まあ、親の能力に比べると泣けてくるほど初歩的な力しかないが、その辺りは少しずつ開発していこう。群れのゆっくりたちと共に。俺の第一義のために。 おおゆっくり、俺はどうして黒ゆっくりなの、なんて嘆き続けるだけでは芸がないしな。 さて、話を戻そうか。 ある母親がいた。特に何の変哲もない家庭を築いていたんだが、強いて言うと子供が生まれつき障害を持っていたのが特徴と言えば特徴かな。知的障害だ。 どれくらいの障害かと言っても、軽度なのか重度なのか基準がよくわからないな。具体的には、発する言葉が「あー」とか「うー」とか意味不明のものだったり、よくかんしゃくを起こして辺りの物をヒッチャカメッチャカにしたりとか。ああ、あと漏らしてしまった大便を団子にして投げて遊んでたってこともあったらしい。そんな程度だ。 母親と父親は人一倍、いや十倍はその子に手間を掛けた。手間を愛情と言い換えられるなら、それはそれは愛にあふれた家庭だったろうな。けれど、父親の方はある日家を出てしまった。 何でだろうね。愛を注ぎすぎて尽きてしまったのか、それとも始めから愛なんてなかったのか。母親がかんしゃくを起こして父親に当たるのが頻繁になった……これは原因に入るかな? 仕方ないことだと思うのだがね。子供にストレスをぶつけるわけにはいかないし、ましてやご近所の皆さんに怒りをまき散らすにもいかない。たまった鬱憤を受け止めてくれるのは愛する夫しかいないというわけだ。 けれど、その父親がいなくなってしまった。さて、彼女はどうなるだろう。自分の子供は常にストレスを渡し続けてくる。バケツリレーに自分の次がいない。どんどんバケツは増えてくる。どんどん、どんどん。積み上げられたバケツが瓦解して、圧死するのは時間の問題。と、その時だ。 家の中にゆっくりが迷い込んできたんだな。 小さなゆっくりだ。まだようやくあちこち歩き回れる程度の。身体無し、頭だけのオーソドックスなレイム種だ。他人の住居内でありながら、「ゆ~、おばさんゆっくりちていってね!」などと鳴いていて、そこにいた。 母親はそれを傷つけるつもりはなかったんだ。ましてや虐待なんて考えもしなかった。ただつまみ出そうとしただけだ。無言ではあったが、別に敵意があったわけじゃない。で、片手でその饅頭をつまんだ。 ところが……どうしたわけか……うん、それが事故だったのか、無自覚の故意だったのかはわからないんだが……力を入れすぎてしまったようだな。 子ゆっくりの叫び声に、ハッと手元をみると、まだ薄く柔い皮に指の先が食い込んでいた。中身がわずかにもれて小豆色に滲んでいる。 「いちゃぁあああい! いちゃいよぉおぉっ!!」という叫びに母親は慌てた。慌てて両手で支えて、 ぷちっ、と。 真ん中から割り潰してしまったんだ。 子ゆっくりも、当の母親でさえも、何が起こったかわからなかったに違いない。しかし、厳然とした事実はそこにあった。潰えた命という現実がね。 そのとき彼女が感じていた感情は何だったと思う? 絶望? 悲哀? まあ、混乱していたのは確かだったろう。一言で表すのは乱暴すぎるかな。ただ、その時、唇の端は上がっていたそうだよ。口だけは間違いなく笑みの形を取っていたんだ。 だから、迷子になった子ゆっくりを探しに来た親ゆっくりが、その母親に誘われるままに家の中に入っていき、さて、どういう末路をたどったか……なんて、説明するまでもないだろう。 玄関扉から上がりかまちにまで散らばった餡子。雑巾でぬぐいながら掃除する彼女の心の中は、もう喜悦の一色で染まっていた。虐待と虐殺による疲労と興奮が心臓をリズミカルに刻み、全身に快楽の血流を巡らす。長い間忘却の彼方に追いやられていた感情が、その時確かに蘇っていた。 ややあって熱が冷めてからは、自己嫌悪の情が海の波のように返ってはきた。彼女の心に染み入って痛みを与えはした。 けれど、自分の子供が、手づかみで食事をして、顔中を食べ物とヨダレと鼻汁まみれにして、そしてその場で大も小も漏らして、アバアバと口を開けてにやけて……みたいな毎日が続くと、母親の内側では、あの刹那の開放感に対する渇きがどうしようもなく襲ってくるんだ。 幸い彼女は村の端、森の近くに住んでいた。子ゆっくりが迷い込んできたのもそのせいであったわけだが、自分の方から捕まえにいくのにも良い条件になっている。 ゆっくりは人に近しい妖怪だからな。もちろんどこにでもいるわけではないが、その森はゆっくりには住みやすい環境だったので、森の周辺をうろついていれば自然遭遇できるほどには多くのゆっくりがいた。それについても母親には幸運だったわけだ。 菓子を使って、主に子ゆっくりを優しい言葉でおびき寄せるのが彼女の常套手段だった。甘味と甘言だな。こういうのに引っかかるのを甘ちゃんというんだ。うん、まあ、中身が甘味なんでずいぶんと捕まえられたわけだけども。げに悲しきは餡子脳。 数え切れないほどのゆっくり。無数の饅頭。それらを蹴り飛ばし、踏みにじり、えぐり込み、焼き焦がし、すり下ろし、握りつぶし、虐めぬき、殺し尽くして。そのつど彼女はたとえようもない高揚を感じ、その後に訪れる虚無の感情にさいなまされた。それは必然の虚しさだ。それでも止めることはなかった。 おや、不可解か? だが、自分を慰める行為というのは得てしてそういうものかも知らんね? で、その母親の住んでいる近くの森にだ、俺たちの群れが移移住してきたなら、当然群れの誰かが被害に遭うのは時間の問題になるよな。まさか、移動してきた翌日にやられるとは思いもしなかったが。そう、夜が一番短いあの日のことだ。 母親はこれまでしてきたように、森の周辺から子ゆっくりの姿を認めると、袋の菓子を出して呼びかけた。ねえ、甘いお菓子があるんだけど、もし良かったらあげるわよ、みたいなことをね。そこにいた三匹の子ゆっくりはすぐに興味を示した。ここまでは狙い通りだ。 しかし、いつもなら大抵簡単に引っかかるはずの子ゆっくりたちが、今回に限って警戒して近づいてこなかった。一定の距離を保って、誘いに乗ってこなかった。それもそのはずで、人間に対しては十分注意して相対するように、入念に教育されていたんだな。いやはや、群れの長の指導力がどれだけ高いかをうかがわせるね。 けれど、そこは母親も歴戦の将。慌てず、騒がず、次の手を打った。 「じゃあ、ここに置いておくから、欲しかったら持っていってね」 上手いね。菓子は小麦粉と砂糖を混ぜ、小さな粒にして揚げたものだ。揚げ玉状のドーナツだな。だから、地面に置くということは、ばらまくわけだ、袋いっぱいのそれらを。 母親は子ゆっくりたちの前から姿を消した。では、子ゆっくりたちはどう行動する? 警戒すべき人間はいない。お菓子には興味がある。お菓子は境界付近とはいえ、森の中にある。 だから、どちらからともなくお菓子に駆け寄る。それでも警戒心は切らしてないから、辺りをうかがいつつ口に含む。森では絶対に口にできないような味が口内に広がる。がっつきたい衝動を抑えて、より安全な森の奥で食べようという考えを誰かが述べる。しかし、できない。大きな塊ならまだしも、砂利のような粒がたくさんあるわけだからね。持ち運べるのはほんのわずかだ。これが母親の意図さ。 菓子を味わうために、子ゆっくりがその場に釘付けになることを想定して、製菓したわけだ。 子ゆっくりが大人のゆっくりに相談するということに考えが行き着けば、それが模範解答だったんだが、美味さの初体験にそこまで頭が回らなかったようだな。いやはや、教育不十分もいいとこだ。親の顔が見てみたいね。 子ゆっくりは徐々に菓子に没頭し始める。そこに母親が駆け寄って一網打尽? いや、真っ正面からいったら流石に気づかれる。音が届かないほどに遠回りして、後ろから失礼するのさ。昼間の森にも危険性はあるが、夜のそれと比べれば、格段に安全だからね。それに何度か使っていた手だ。森に立ち入ることに危機感は持ってなかった。そして、それは正しい認識だった。確かに、これまでは。 時間を掛けすぎてしまったのがまずかった。これまでの事例では問題のない時の間だけれど、この群れにおいては独自のシステムがある。十分な時間だった。母親と俺がご対面するには十分な、ね。 それで。 俺は彼女が一番望んでいることを叶えてやった。 本当に虐待したいものを虐待させてやった。本当に殺したいものを殺させてやった。 めでたしめでたし。 さて、お前さんも明日は早いんだろう。そろそろ寝床に戻ったほうがいい。また頑張ってもらわなくてはならないことが山ほどあるしな。 どうした? うん? その後の展開? おいおい、話はもう終わったんだぞ。 シンデレラや桃太郎のその後を問いかけるのは邪道だと思うがな。色々想像して楽しむのがいいんじゃないか。 おとぎ話とは違うって? ふむ。 そうだな。 『それから母親は苦しみから解放され、新しい人生を歩むことになりました。村人は母親の苦悩を知り、今後の彼女を支えていくことを約束します。確かにそれはイバラの道であり、進むには苦痛を伴うでしょうが、その遙かな先には光り輝く未来が…… いや、もちろん冗談だ。 追い詰められるままに誰にも相談できなかった母親。 何も気づくことなく放置し続けていた村人。 彼らがどんなエピローグを演じるのか。演じられるというのか。 言わぬが花というものだろう。語っても陳腐だ。 To be or not to be. このままで良いのか、いけないのか、彼女は悩み続けてきた。悩みながらも殺し続けてきた。殺しながらも渇き続けてきた。 それならば、この話はこの言葉で締めくくるのがふさわしいだろう。 「満足は死である」 黒ゆっくり2 続く 別の作者が書いたと思われる続き このSSに感想を付ける
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一時間目、数学 数学、数字ねぇ…… うっ、そういえばいつも気にしてるあの数字。確かこの一ヶ月で2kg増えたんのよね。 原因は……いろいろと心当たりがありすぎる。 まず時々作ってくれるこなたのお弁当。毎回あの豪華さは反則よね。美味しいから全部食べちゃうし。 次にこなたの家に泊まりに行ったときのこなたの手料理。同じく結構なボリュームがあるけどついつい食べきってしまうから。 あとはたまにポッキーゲームとかのお菓子のつまみ食いかしら。糖分の摂りよね。 全部こなたのせいよね。わかっていたことだけど。 運動しないと……っていってもどちらかというとこなたのほうが体力使ってるわよね。 でも私だって体重かけないように自分の体を支えてるからそうでもないか。 回数増やせたらいいんだろうけどあいつ嫌がるしなぁ。 やっぱり幸せ太りってことにしよう。 そういえばもう一つ重要なのがあったわね。 私159cm、こなた142cm。その差17cm。 この差って結構大きいのよね。 たとえばキスするとき私から不意打ちのキスはしやすいけど、こなたからはあまりされない。 いや、もちろんキスしてほしいんだけどね?でも私のほうがすぐしたくなるというか、恥ずかしがってしてくれないから。 それにキスするときつま先立ちなのがすっごく可愛いし。 あと抱きしめやすいこととか、守ってあげたくなる愛らしさとか。 うん、この身長差がある限りこなたが私の嫁だというのは絶対よね。 休み時間 私は急いで隣のクラスへ向かう。一分一秒でもこなたと一緒にいたいから。 私の愛しい人は笑顔で迎えてくれた。 思わずぎゅっと抱きしめる。 この小さな、華奢な体を強く抱いて、私はこの子をずっと守っていきたいと心に誓った。 あ、ここは教室の中だったわね。別に関係ないけど。 つかさとみゆきは真っ赤になってる。他の生徒は悪いけど目に入らなかった。 だって私の視界に広がっているのは綺麗な青。揺れるあほ毛が可愛らしい。 きっと羞恥に頬を染めているんだろうこなたは私の胸に顔を埋めている。 そんな恥じらうこなたを可愛いと思いながら、母性本能からかずっと頭を撫でていた。 二時間目、国語 私は帰ってきた。 ネタじゃないわよ。危うく幻想世界に迷いこみそうだった意識を現実世界に呼び戻したってこと。 だってこなたはあんなにも温かくて、柔らかくて…… 言っとくけどやましいことは何もないから。 ただ抱きしめて頭を撫でてただけじゃない。 誰かが誰かの頬にキスしてるシーンが全年齢対象なのと同じよ。 さて国語ですか。 読解力ニアイコール洞察力。 つまり今日のこなたはどうだったって聞いてるのよね。 わかったわ、私のラノベで鍛えた(ような気がする)表現力で説明してあげるわ。 まず頭の天辺にそりたつあほ毛。 まるで意思を持ってるかのようにこなたの気持ちに合わせて揺れ動く。 相変わらずそれは元気よく立っていたわ。 あんなことやこんなことをしてるときだって、雨に濡れたって自己主張してるものね。 はい、上の一文でいかがわしいこと考えた人は例の板にお世話になってるってことでおk?答えは聞いていない。 さて次は、いつも半分閉じてるような瞳。 ホントは大きくて綺麗な緑色してるんだけど、あの目がぱっちり開かれることはそうない。 だけど抱きしめたときとか、不意打ちにキスしたときとか、思わず襲っちゃったときとか。 驚きに開かれた瞳は、それはそれは吸い込まれそうなほど綺麗で、それゆえ私は止まれなくなる。 って話がそれてきてるわね。 私の理性が脆いんじゃなくてこなたが魅力的すぎるってこと。 以上。説明終わり! あとは、そうねぇ……あの憎たらしい笑みを浮かべる口かしら。 えっ?説明は終わってはずだって? 何言ってるのよ。それはこなたのエメラルドグリーンの瞳についてでしょ。 柔らかい唇の説明はまだまだこれからよ。 最初に言っておくけどあの小悪魔的な猫口は嫌いじゃない。 こなたが楽しいならいいか、みたいな感じで。私の反応をこなたが喜んでるみたいだしね。 でもやっぱり花のような笑顔のほうが好き。 最近は照れ笑いが多いんだけど、恥ずかしがり屋なこなたは可愛いからよしとする。 あれ?唇はどこ行った? 気を取り直して魅惑的な唇についてです。 いつもリップでも塗ってるのか、艶やかに光るそれは重ね合わせると柔らかくてしっとりとした感触をもたらして…… あっ、これ以上考えると私の理性が危ないのでやめます。 ちなみにキスのお味はこなた味ということで。誰にも教えてあげないわよ。 キスといえばつい舌も絡めてしまうのよね。 だっていつもお昼に誘ってると言わんばかりにチョコを舐めてるんだもん。あんなの見てたら仕方ないでしょ。 ……っと、余計なことまで話してしまったわ。聞かなかったことにしてくれる? それから羨ましいくらい綺麗で癖のない青い長髪。 もったいないことにあいつは髪をいじらない。今日もいつも通り風になびかせてやってきたもの。 まぁ寝ているときとかに手ですくのも好きだからいいけど。 でもやっぱりいろんな髪型を試してほしいわぁ。 まず何度か見たことのあるポニーテール。ちょっと大きめのリボンでまとめてね。 ……これはいい。サイドから下ろしたところもグッドですよ、こなたさん。 次に私とおそろいのツインテールなんかもいいわよね。 ツンデレこなた、今日にでもお願いしようかしら。 私のリボンを貸してあげるのもポイント高いわよ(何の話だ)。 他にもいろいろできそうよね。 もしかしたらバイトでやってるのかもしれないしそれくらい聞いてくれてもいいでしょ? 見る分には萌えるとか、なんだかこなたの言ってることがわかる気がする。 最後に体型的な話は一日で変わるものでもないから省略させていただく。 まぁそれでも毎日チェックしてるんだけどね? この場にふさわしくない内容もあるのと、私の理性を保つために、ね。 あと身長体重に関しては数字的な意味で説明したから十分でしょ。 「――を薔薇戦争と言う」 ふと聞き慣れた金髪独身美人教師の声がした。 どうやら私がこなた談義をしているうちに三時間目になっていたらしい。 こなたのこととなると時間を忘れてしまうのは仕方ないことよね。 『さて薔薇、という言葉が出てきたわけだが、この少女はフル○タのファンでさる夏の決戦にて呪ばk……し、失礼しましたっ!』 なんか不愉快な単語が聞こえた気がするけど、気のせいよね? ええ、気のせいよ。気のせいということにしなさい。 言っとくけど私は薔薇より百合派だからね。 あんな見た目は綺麗でもトゲのある薔薇なんてダメよ。 ああ、百合は美しい…… そんなことより黒井先生、こなたをあまりネトゲに誘わないでくださいね。 私には疲れて寝ちゃったこなたを襲う趣味なんてないんだから……たぶん。 寝顔が反則なくらい愛らしいのも、舌っ足らずに寝言で「きゃがみ」って呟くのも誘ってるとしか思えない。 というわけで私の理性のためにも先生自重してくださいね。 あっ、もしかして私への挑戦状なんですか? やけに独身という言葉が身に染みるお年頃ですもんねぇ。 すみません、お先失礼します。 法律?そんなものにこだわる人にこなたを嫁にもらう資格なんてないわ。 なんなら私が変えてみせるっ! 『以上。柊姉の心の叫びでした。世界史?そんなの関係ねぇ』 『さぁ四時間目は本日のメインイベント、体育だあぁぁ!!(大嘘)』 この場は都合の良い男No.1の白石みのるが仕切らせていただきます。 本日行う競技はバスケットボールです。 それではチームを紹介しましょうか。 (あくまで文章ですが図形的に捉えてくださいね) ゼッケン白×ゼッケン黒 かがみ×こなた みゆき×つかさ あやの×みさお おばちゃん女子高生×おばさん女子高生(声が) おばさん女子高生×おばちゃん女子高生(中の人的な) (×はVSの意。他に意味はない、考えちゃいかんのです) よろしいですか?では試合開始ぃ!! さぁジャンプボールから試合が始まるわけですが、ジャンパーはなんとかがみ×こなたっ!? さすがにこの身長差に審判である僕も動揺を隠しきれませんが、どうやらこれでいいそうです。 高々舞い上がるボール。 ゆっくりと落ちてきて、それぞれがベストのタイミングで跳ぶっ。 「つかさっ!」 なんと競り勝ったのは泉こなた! あの身長で柊かがみを上回る跳躍を……なんてことはなく、僕のミスです。 単純に真上にボールを上げるのがこんなに難しかったなんて。 はい、すみません。 着地した二人は片方が笑顔、もう片方は怒りの表情というなんと極端な……ごめんなさい、ごめんなさい。 さて、やはり運動の苦手そうな柊つかさ、即座に日下部みさおにパスします。 それを受け取ったみさお、持ち前の足を生かして速攻をしかけるっ! おぉーっと、ここで待ち受けたるは峰岸あやの。 さぁみさお×あやの一対一だぁ! 右に左に何度か突破を試みるみさお。 しかしことごとくあやのに阻止される。 ここでついに突破を諦めシュートの構えを見せるみさお。 が、それを待ってましたと言わんばかりに間を詰めるあやの。 「……」 「……っ!?」 慌てパスを出したみさおだがあやのはそれでも止まらなくて…… あの、お二人さん、顔がものすごく近いです。 ようやく動きを止めたあやのだがみさおのほうが上体を傾けて…… ちゅっ な、なんとっ!? き、キスしましたよ? しかもそのままコートに倒れていく二人。 ああ、あやみさじゃなくてみさあやだったか…… さぁ! もはや試合を放棄した二人はほっといてボールは? さすがみさお、とっさのパスもしっかりと泉こなたの手に渡っている。 そしてドリブルを仕掛けるこなた。速い!そして低い! 天性の運動神経とその低い身長をフルに生かしてコートを駆ける。 これはスーパー小学生だあぁぁ!! い、いえナンにも言ってないデスよ……? このまま先制点はもらったかぁ!? い、いや柊かがみが立ち塞がったぁ! 「かがみっ!?」 突然のかがみの登場だが勢いに乗ったこなたは止まらない、止まらない…… ドサッ ピーッ 「チャージングです」 そのままこなたはタックルをかましたわけだが、かがみはしっかりとそれを受け止めた。 ええ、僕もちゃんと審判やってるんですよ。 さぁボールを渡してください。 そんで二人も立って…… 「どうかしましたか?」 「こなたが足くじいたみたい」 「そっ、それは大変だ。泉、大丈夫か?」 答えはない。 というかかがみがこなたを胸に抱えてしまってる。 そういうことですか。 「はいはい。怪我人は保健室へどうぞ」 「悪いわね。えっと……セバスチャン」 抱っこは歩きにくいからか、真っ赤になって固まってしまったこなたを横抱きにしてかがみは出ていった。 ああ、どうしてこうもバカップルが多いんだ? なんか息を切らしながらみさあやが試合に加わったけどよぉ。 つかみゆ?みゆつか?の1on1はどうやってさっきのかがこなを再現しようかタイミングを図ってやがる。 てめぇら全員アンスポじゃあぁ! そのままかがみとこなたの二人は早退してしまったそうな。 後日ちゃんと授業に出席したかがみが、 生物の授業で桜庭先生によるカタツムリ談義で悶絶したことや、同じく生物の授業で遺伝の話から近未来の科学を夢見たこと。 家庭科の調理実習で料理ではなくこなたを調理しようとしたことなど。 高校生として覚えるべき事項の数々を間違った方向に受けとめてしまったそれらの秘話については、 語り出すと長くなってしまうため。 また、この場にふさわしくないため割愛させていただく。 コメントフォーム 名前 コメント GJ!!(≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-08-03 08 20 01) みさあやか〜? -- かがみんラブ (2012-09-24 06 16 16) めんたま飛び出た(割愛のせーで) -- 名無しさん (2010-01-07 03 02 59) 続編マジ希望します! -- 名無しさん (2009-06-29 23 20 19) 割愛しちゃらめぇぇぇぇっ! -- こなかがは正義ッ! (2009-06-29 15 39 13) 眼鏡が砕けたw そして割愛してほしくないw -- 名無しさん (2009-05-11 12 38 54) 投票ボタン(web拍手の感覚でご利用ください)
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「はい、剥けましたよ」 「ありがと~」 コタツに脚を入れてぼけーっとしている唯先輩に、たった今剥いたばかりのみかんを手渡す。 すると、唯先輩はあ~んなんて言って口を大きく開けた。 「……何ですか、それ」 「あずにゃん、食べさせて~」 大体解ってたけど、口に出して言われるとやっぱりため息を吐いてしまう。 はぁ……。 「あずにゃんどうしたの?」 「いえ、別に……」 唯先輩はこういうことを当たり前のようにするから困る。 二人で喫茶店に行ったときも、ひとつのグラスにストローが2本刺さっている飲み物を頼んで、周りの人の注目を集めてしまった。 あの時は本当に恥ずかしくて、すぐに取り下げようと思ったけど、唯先輩の幸せそうな顔を見て何も言えなくなってしまった。 何だかんだいって、やっぱり先輩には甘いなぁ……。そのうち、あの顔を見るために何でも許してしまいそうで怖い。 いや、もしかしたらもう手遅れかもしれない。現に今だって、唯先輩のわがままを受け入れようとしているわけだし……。 駄目だと思っても、体は勝手に動いてしまう。 剥き終わったみかんを一房、人差し指と親指で挟み、それを唯先輩の口へと持っていく。 「はい、あ~ん」 「あ~ん」 ぱくり、と唯先輩の口がそれを銜えるのを確認して、新しくもう一房、同じように指で摘まんで持ってくる。 それを繰り返して、全部無くなったらまた新しいみかんを剥き始める。 この作業を何度か繰り返すと、指がだんだんと黄色くなってきた。 ちょうど、唯先輩もおなかが膨れた頃だろうし、手を洗うために立ち上がる。 「あずにゃん、どこ行くの?」 「ちょっと、手を洗いに」 そう言いながら、ずっとみかんの皮を剥き続けていた指をよく見えるように差し出す。 すると、唯先輩はあろうことかその指を自分の舌で舐め始めた。 「ぺろぺろ」 「ちょ、唯先輩!?」 もちろん、そんなことをされたらびっくりしてしまう。 思わず体を引きながら、唯先輩に尋ねる。 「何してるんですか」 「なにが?」 「どうして、私の指を舐めたりしたんですか?」 「どうしてって……あずにゃんの指がおいしそうだったからだよ?」 「どんな理由ですか……」 「だ、だって、洗い流しちゃったらみかんの味がなくなっちゃうもんっ」 「――はぁ?」 思わず素っ頓狂な声を出してしまう。 「ど、どういうことですか?」 そして、おずおずとそう尋ねる。言ってることがよく解らない。 「んと、あずにゃんは今までその指でみかんを剥いてくれたよね?」 「そうです」 だからどうだというのだろうか。気になったけど、とりあえず唯先輩の言葉を待つ。 「ということは、その指にはみかんの味が染み付いてることになるよね?」 「まぁ……確かに」 この黄色いのはみかんの果汁とかそんなのだろうし。――って! 「ま、まさかこれがもったいないとか言うつもりなんですか!?」 「うん、そうだよ」 どうして私が驚いているのか解らないといった顔で、唯先輩は首を縦に振った。 「それじゃ、納得したよね?」 「え、えぇ……はぁ、まぁ……」 有無を言わさない口調だったから、特に考えもなしに頷いてしまった。 ――それが、私の失敗。 「あずにゃんが納得したことだし、仕切りなおし~っ」 「……って、え!?」 勢いよく飛びついてくる唯先輩を止めようと、両手を突き出したのが不味かった。 確かに唯先輩を止める事は出来たけど、その代償に私の手首をがっちりと掴まれて、またしてもさっきと同じように指を舐められてしまう。 唯先輩に舐められている指先が熱くなって、次第にその熱が体全体に回ってきた。 「や、止めてくださいよ……」 「え~? おいしいのに~」 「どこがですか……、ただ汚いだけでしょう」 「いやいや、あずにゃんの味がしておいしいよ?」 「――へ?」 唯先輩の思わぬ言葉に、一瞬、抵抗する力が無くなってしまった。その一瞬の隙を突いて、唯先輩は更にとんでもないことをした。 「あ~ん」 ぱくっ、という擬音が聞こえたと同時に、指先にさっきとは比べ物にならないほどの熱を感じた。 見てみると、私の指が完全に唯先輩の口の内に入ってしまっている。 「ゆゆゆゆゆゆゆゆっ!!!!?」 驚きのあまり呂律が回らない。 唯先輩は私の声に小首を傾げてどうしたの、と一言。 「どうしたのじゃありませんよ! 何で私の指を口に銜えてるんですか!!!」 さっきから怒鳴ってばっかりだけど、これは仕方がないと思う。だって、いきなりこんなことをされたら誰だって驚くはずだし。 いや、だからといって別に嫌ってわけじゃないんだけど……、ね。 むしろ歓迎というか何というか……、タイミングさえ考えてくれれば私は……。 と、ここまで考えて、私は自分の考えに愕然とした。まさかこんなことまで受け入れようとしているのか、と。 視線の先には、相変わらずおいしそうに私の指をしゃぶっている唯先輩。 この状況、まるで私と先輩がイケナイことをしてるみたい……。そう思うと、自然に喉が鳴ってしまう。 ――って、何考えてるんですか、私っ! 頭をぶんぶんと振って、イケナイ考えを外に逃がす。そして、やっぱり止めさせようと、口を開く。 「ちゅうぅぅぅ……れろ……」 「あぅ……ぁ……」 ――だけど、唯先輩の口で指を吸われて、あまつさえそのまま指に舌が絡み付いてきたものだから、開いた口から思わず情けない声を出してしまう。 ……先輩、さすがにこれは……危ないですよ……。 いつものスキンシップぐらいなら、まだ受け入れられる範囲だけど、こんな……指ちゅぱ、なんて……。 明らかにスキンシップの度合いを超えている。こんなことをされたら頭が沸騰しちゃうよ……。 「ちゅぱ……ぺろ……」 「うぅ……ぁ……」 ――体が、熱い。指先がジンジンする。なんだか胸もドキドキしてきたし、どうしちゃったんだろ……。 体の異常に思考が追いつかない。本当は解ってるはずなのに……。 「あずにゃん、おいしい~」 「な、何言って……」 体は熱いのに、頭はほわほわと浮いているみたい。言葉が脳を通さずに出てくる。 もうこのまま唯先輩のされるがままになってもいいんじゃないかという考えも出てきて―― だめっ! すんでのところで理性を取り戻し、すぐに唯先輩の口から指を引き抜く。 そしてそのまま一気にまくし立てる。 「す、すみません! 私、ちょっとトイレに行ってきますっ」 「あっ、あずにゃ……」 後ろから唯先輩の声が聞こえたけど、それを振り払うようにして一気にトイレまで走る。 バタン、とドアを閉めて、ほっと一息吐く。 そして、さっきまで唯先輩が舐めていた指を、掲げてみる。 「……」 ゴクリ、と喉が鳴った。 「だ、大丈夫だよね……」 止めようと思ったのに、体が勝手に動いてしまった。 未だにジンジンと熱を帯びているその部分を、舌でぺろりと舐めてみる。 ――なんだか、とっても甘い味がした。 Fin
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―――2月14日。 恋心を抱く女の子が、意中の相手にチョコレートを送る日。 それが今日、聖・バレンタインデー。 ……自分で言うのも恥ずかしいけれど、私もその一人で……。 とある夜に、こなたが『俺の嫁』だからよ、と言った私だけど、女の子として付き合ってる相手に贈りたいのよ、やっぱり……。 それも……できれば、手作りチョコ。 工夫とか出来ないし、市販のより味は悪くなっちゃう……と思う。 でも、愛情をお金で賄うのは無理よ! ……きっと……。 私は、時計を見た。 短針は0と1の間、長針は3を指している。窓から見える外の風景は、黒一色。 つまり、AM0:15 学校の準備をしなきゃいけない時間まで、後約7時間足らず。 ……まだ、肝心のチョコは出来てない。 一週間前からつかさに協力してもらって、勉強の合間をぬって練習してきたけど、やっぱりなかなか上手くいかなかった。 頭ではわかっているけど、実践出来るだけの技術が私にはない。 何で私はこんな料理出来ないんだろ……。 思わずため息がこぼれる。 やっぱりつかさに手伝って………って、それはダメ……。 ―――数時間前。 「お姉ちゃん、本当に大丈夫?」 「自信はないわ……。けど、やらなくちゃ」 「でも、今まで一人でやったことないんだよ?」 「うん……。だけど、これは私自身の力で作らなきゃダメなのよ。完全に自己満足なんだけどね」 「お姉ちゃん……」 「こなたに思いを伝える物だから、私一人でやりたいの。わざわざ言ってくれたのにごめんね、つかさ」 「ううん、いいよ。私こそ、何にも考えないでごめんね」 「何言ってるのよ、つかさは私たちのこと、よく考えてくれてるわ。つかさとみゆきがいてくれなかったら、今私がこうしてチョコを作っていられることはなかったわよ」 「そ、そう言われると、照れるなぁ……」 「二人のためにも、こなたのためにも、そして私のためにも、頑張りたいの」 「えへへ、お姉ちゃんがお料理でこんな頑張ってるの初めてみたよ。こなちゃんも、きっと喜んでくれるよ」 「ば、バカ、からかってくる、の間違いでしょ!」 「あはは、お姉ちゃん最近可愛くなったよね」 「はぁッ!?突然何わけわかんないこと言ってるのよ!?」 「わけわかんなくないよ~。実際そうだしね~♪お姉ちゃん、頑張ってね!」 「ちょ、ちょっとつかさ、言いっぱなしのままいかないでよ……って、行っちゃったし。……時間もあんまりないし、作り始めなきゃ」 ―――そして今。 うう……静かに混ぜるってあれだけ言われてたのに、忘れるなんて……。 つかさといるときはできてたのに、私一人になったら何であんな慌てちゃったんだろ……。 ―――冷やす時間も考えたら、これが最後。 今度は、ミスしないように……。 「なんか凄いねぇ。受験真っ只中の人もいるのに、空気がいつもみたいに殺気じみてないよ」 こなたが、自分の教室に入る直前に言う。 「そうね。やっぱりみんな、多かれ少なかれ期待してるんじゃない?」 「かがみもその一人かな~?」 こなたが、ニヤニヤしながら私を見る。 「う、うるさい。そうゆうのは黙して語らないものよ」 「デレながらも否定しないかがみ萌え♪」 「へ、変なこと言うな」 相変わらずニヤニヤしながらこなたは私を見て言う。 「ね、かがみ」 「何?」 こなたが突然私に近づき、背伸びして耳元でそっと囁いた。 ――――――放課後、教室来てね。 「う、うん……」 私は顔が熱くなるのを感じながら、小さく頷いた。 満ちた月が空に浮かんでいた『あの』夜。 私とこなたの恋人としての関係がスタートした。 まだ私たちの関係を知る人は多くない。 つかさとみゆきとこなたのご両親とゆたかちゃん、そして私の家族。 私たちは、お父さん、お母さん、姉さんたちにちゃんと関係を伝えた。 最初はみんな驚いてたし、先のことを諭すようなことも言われた。 でも、私とこなたの意志の強さをだんだん理解してくれて、最後には私たち二人の関係を認めてくれるだけでなく、どんな状況でも私たちの味方になってくれるとまで言ってくれた。 あのときは嬉しくて、みんないるのに涙が止まらなかったっけ……。 こなたもこなたで、私をからかいながらも、目に涙を溜めてた。 やっぱり、一番身近な人が味方になってくれるのは、とっても心強い……。 ありがとう、お父さん、お母さん、姉さんたち―――。 日下部と峰岸にも伝えた。 「なんだよ、やっぱり柊はちびっこの妻だったのかよ」 と日下部言ってきたので、私はすかさず返す。 「こなたが私の嫁なのよ。勘違いしないでよね?」 「ひ、柊……」 私の言葉に、日下部は何故か呆然としている。 「ん~?どうかした?」 「ずいぶん惚気てるな……」 「それを言うなら、峰岸のほうがそうなんじゃない?」 彼氏いるし、ね。 「ひ、柊ちゃん……そんなことないよ」 「そのあやのとおんなじ顔してっぞ……」 「み、みさちゃんまで……」 「いや、それ以上かもしんねぇ……」 そうかしら……?そこまで言われるほどじゃないと思うんだけどね……。 私の感覚がおかしいだけ? 「でも柊ちゃん」 「何?」 峰岸は、私にむかってにっこり微笑みながら言った。 「今の柊ちゃん、とっても幸せそう。悩みなんて何にもないって顔してるよ」 「そうだな、いつかの時の暗い顔がウソみたいだぜ」 峰岸はあの頃から気づいていたみたいだからね……。 日下部も多分同じだったんだと思う……。 やっぱり、あの頃の私は他の人が見てもわかるくらい悩んでたんだ……。 ―――あの頃は、本当に辛かったわ……。 ―――でも今は、本当に幸せ……。 「よかったな、柊」 「おめでとう、柊ちゃん」 日下部は快活な、峰岸は柔らかな笑顔で私に言ってくれた。 「うん、ありがとう、二人とも」 私は自然と微笑みながら、その言葉を口にしていた。 キーンコーンカーンコーン――。 今日という日の出来事も、開幕はチャイムだった。 そのチャイムは、最後の授業の終了を告げるもの。 つまり―――――放課後になったことを知らせる音。 「こなた、お待たせ」 私はこなたに言われた通り、3年B組の教室にきていた。 3年のこの時期となると、みんなすぐ帰って家や予備校での勉強に勤しむため、 掃除当番に当たっていたとは言え、まだ放課後になって二十分も経ってない今でさえ、もう教室は静まりかえっていた。 「お、かがみん、待ってたよ~♪」 「ごめん、ちょっと掃除当番になってて……」 「いやいやぁ、ちょっとくらい遅いほうが周りに人もいないし、恥ずかしくなくっていいよ」 「ま、まぁそうね」 その言葉の後、少しの間静寂が流れる。 お互い、切り出すのに少しの勇気が必要……。 けど、必要な少しの勇気が、絞り出せなくて……。 先に口火をきったのはこなた。 「それでね、かがみ」 こなたは少し言いづらそうに、切り出した。 「う、うん……」 「実は、ね」 「うん……」 「つかさとみゆきさんにも、いてもらってるんだ」 「えええっ!?」 こなたの口から出た想定外の言葉に、教室を見渡すと私達の対角線につかさとみゆきがいた。 「あはは、お姉ちゃん、ごめんね……」 「そ、その、お邪魔でしたらすぐ私たちは出て行きますので……」 つかさとみゆきは、二人とも気まずそうな顔をしていた。 私には、こなたが何を考えて二人に残ってもらってるのかがわからなかった。 けれど、その問題の解はすぐにこなたに明かされた。 「今日は実はチョコを渡しあうだけの日にしたくないんだ」 「えっ……?」 こなたの顔は、いつになく真面目だった。 「私が前に言った、お互いの選んだ料理を交換するって話、覚えてる?」 漠然と記憶にある、単語の欠片。 それを1つずつ結び、少しずつ浮かび上がる、記憶の像。 導き出されたその内容。 「それって……」 「う、うん……」 顔が熱くなるのを感じる。こなたの顔もいつの間にか真っ赤になっていた。 「け、けけけっけっけ………」 恥ずかしさのあまり、思考回路はショート寸前な私は、舌が回らない。 「そう、結婚式……」 こなたは小さな声でそう言った。 「な、なななな、なななぁぁぁ!?」 ―――――ッ。 「で、でね、かがみ」 「ハウウゥ……しょーとシマシタデスゥ……」 「か、かがみ?大丈夫…・…?」 「はっ!?わ、私どうかしてた!?」 こなたが心配そうな顔で私の言葉に頷く。 「う、うん……」 「ごめん……。それで、なに?」 私の言葉に、こなたはその小さな口を開いた。 「今日、ここでやりたいんだ。想いが詰まった食べ物を交換して食べあって、そして誓いの言葉を言う。そんな簡単な、ネトゲの中でのと同じ結婚式だけど……私はそれがやりたいんだ。………もちろん、かがみがよければ、だけど……」 そっか……。 今まで私たち、付き合ってからこれといってお互いにその証となるようなこと、ほとんどしてなかったからね……。 やっぱり、少し不安なんだ……。 それにしても、お互いの選んだ食べ物を交換して食べる結婚式、か――――。 「ねぇ、こなた……」 「うん、分かってるよ……。ネトゲの中でのなんて、バカみたいかもしれないね。遠慮しなくていいよ、嫌だったらはっきり―――」 「そんな素敵な結婚式をあげるつもりだったなら、ちゃんと言っておいてよね!」 「えっ?」 こなたは、きょとんとしていた。 「い、良いの?ネトゲのやつのなんだよ?」 「当たり前じゃない。そんな素敵な式、私もやってみたいわ。たとえネトゲのでも、中身は人なんだから、現実のと変わらないわよ。それでたくさんの人が幸せになれるんだから、私たちも幸せになれるに決まってるじゃない」 「かがみ…………ありがと」 「お礼を言いたいのは私のほうよ。ありがとね、こなた」 私の言葉に照れたような顔を一瞬するこなた。でも、それを隠すようにいつもにすぐ戻った。 「ツンとデレを両方兼ね備えた言い方とは流石だね、かがみん♪」 「もう………茶化すな」 いい雰囲気なんだから、余計なこと言わなきゃいいのに、こいつはまったく……。 「それで、つかさとみゆきさんにも、私たちの結婚式を祝って欲しかったんだ」 「だから、二人に残ってもらったわけね」 「うん……」 ―――そっか、そうだよね……。 二人のおかげで私たちは今こうしていられる。 そんな二人には祝って欲しいよね……。 「つかさ、みゆき」 私は二人のほうを向く。 「私からも、お願いしてもらって良い?」 私の言葉に、つかさとみゆきは笑顔を咲かせた。 「うんっ!」 「はい、まかせてください!」 「二人とも、ありがとう」 私も笑顔で返した。 「それじゃ、みゆきさん、お願いしていいかな?」 「はい、任せてください」 こなたの言葉に、みゆきが笑顔のまま頷く。 「え、どうしたの?」 よくわからない中、みゆきはそそくさと本を用意し始めた。 「ふふ、かがみん、やるなら本格的に、がいいでしょ?」 「そ、そりゃそうだけど……」 「ってことで、みゆきさんに神父様役をお願いしたのだよ!」 「ええっ!?」 こなたの言葉に、本日何度目かの吃驚。 「調べてまとめた台本を用意して一昨日に聞いたんだけど、快く引き受けてくれて助かったよ~」 「本物の神父様とは程遠いものとは思いますが、全力を尽くしますね」 「ありがと、お願いね、みゆきさん」 私は二人のやり取りを見て、こっそりとこなたに聞く。 「こ、こんな大掛かりなお願いしちゃって、もし私が作ってなかったらどうするつもりだったのよ……」 受験も始まってるし、作ってない可能性も十分にありえたのに……。 「私にはかがみが作ってくれてるって、分かってたからね♪」 自信満々に言うこなた。 まったくどっからその自身が沸いてくるのやら、と思った矢先に浮かぶ、一人の顔。 「またつかさか………。まったくあの子は―――」 「いや、違うよ?」 「え?」 「かがみの手、丁度一週間前くらいから絆創膏がどんどん増えてるんだもん。練習してくれてるんだって、すぐわかったよ」 こなたが笑った。でも、それは表現するなら、ニヤリ。 「ありがとね、かがみん♪」 「ば、バカ……分かってたなら言いなさいよ……」 「え~?だって、ねぇ?」 うう……、ずっと隠れてやっていたのに筒抜けだったなんて……。すごい恥ずかしい……。 「ああ、もういいわよ!!早く始めるわよ!!」 「にひひ、照れ隠しするかがみは相変わらず可愛いねぇぇ~?」 「う、うるさい!みゆき、お願い!」 「はい、わかりました。では、お二人とも、こちらへ」 窓を背にしながら、優しく微笑んでいるみゆき。 ちょっと離れたところで、にっこりと見ているつかさ。 みゆきの方を向きながら、少し緊張しているこなた。 こなたの横に並んで、始まりの時を待ち続ける私。 「えー、コホン。それではここに、柊かがみと泉こなたの挙式を始めます」 ―――そして、式は開かれた。 窓には真っ青にもかかわらず、月が浮かんでいた。 「――――でも、消して忘れないでくたさい。夜空を見上げることを」 すらすらと止まることなく、みゆきの口から紡がれていく言葉。 「星々のひとつひとつが大いなる天空を形づくっているように、私たちひとりひとりにも必ず意味があることを。皆が出会いを大切に、互いを愛している限り、この地は祝福と加護を受けられるのです、と」 その言葉のひとつひとつが、とてもゲームの中でのものとは思えない程、素敵な表現ばかり。 「出会いは星の運命ですが、愛を成就させるためには試練が必要です。星の運命によって出会いし、この2人も、今宵その試練を受けます。ここに集った我らは、その証人となるのです」 今はその証人は、つかさとみゆきだけ。 でも、いつかきっと、もっとたくさんの人が私たちを祝福してくれる日が来てくれる。 「かがみ、こなた、向かい合ってください」 みゆきの言葉に、向かい合う私とこなた。 「こなた、今日はかがみの血肉となるものを持ってきましたか?」 「はい。ホワイトチョコを用意しました。私たちの関係が円満なように、鏡のように丸く、月のように真っ白なチョコです」 こなた……そこまで考えてくれて、作ってくれてたのね……。 って、エピソードまで言わなきゃいけないの!?聞いてないわよーーッ! 「よいでしょう」 みゆきはそう言って頷いた後、今度は私の方を向く。 「かがみ、今日はこなたの血肉となるものを持ってきましたか?」 ど、どうしよう……。何も思い浮かばないし……。 ああ、もういいわ!はっきりそのまま言ってやるわ!! 「はい。生チョコを作ってきました。一週間前からつかさと練習して、最後には私一人の力で作りました。ちょっと不恰好だけど、私の想いをこめました」 「よいでしょう」 さっきと同じように頷いてから、みゆきは再びこなたの方を見る。 「こなた、汝、この者を夫とし、星の雨が降りし朝も、陽が失われし昼も、闇が訪れぬ夜も、助け合い、分かち合い、共に過ごすことを願いますか?」 「はい、願います。我が運命は、かがみと共に」 「よいでしょう」 みゆきはこなた向かってうなずいた後に、また私のほうを見る 「かがみ、汝、この者を嫁とし、星の雨が降りし朝も、陽が失われし昼も、闇が訪れぬ夜も、助け合い、分かち合い、共に過ごすことを願いますか?」 「はい、願います。我が運命は、こなたと共に」 「よいでしょう」 みゆきは今度はまっすぐ私たち2人を見る。 「それでは、互いの願いを血肉とするため、交換した食物を口にしてください」 みゆきの言葉通り、私はこなたにチョコレートを差し出す。 こなたも、キレイに包装されてリボンまで可愛く結んであるチョコレートを私に差し出してくれた。 私はこなたに、こなたは私に。 それぞれの思いが、それぞれの手に。 こなたの渡してくれたチョコのリボンをとって包みを敗れないように剥がして中の箱を開けると、こなたの言葉通りの丸い大きなホワイトチョコが1つと小さめのが1つ、きれいに収まっていた。 さ、流石こなた、上手ね……。 こなたの方を見ると、こなたも私の作ったチョコを丁度見ているところだった。 ――早朝、今度はなんとか成功したけど、時間がなくて……ううん、言い訳しないわ。私が不器用で、セルクルから外した後のカットが上手くいかなく出来なくて……。 それに、専用の箱に入れて包むときも、少しきたなくなっちゃったし……。 あれじゃ、こなたに笑われるかも……。 そう思ったけど、こなたの私の作った不恰好なチョコを見る目は、嬉しそうだった。 「かがみ」 突然こなたが小声で話しかけてくる。 「何?」 私も小声で返す。 「今はそっちの小さいほうを食べてね。そうすれば、同じくらいの時間で食べ終われるから」 「わかったわ」 「それと……せーの、で食べよ?」 「ふふ、そうね、わかったわ」 私とこなた、2人で頷きあう。 「「せーの」」 私とこなたは同時に食べた。 口の中に、甘い味が広がる。 「美味しい……」 つい、そう言葉が漏れていた。 「かがみのも、美味しいよ」 「あ、ありがと……」 素直に美味しいっていわれると、結構恥ずかしいわね……。 そう思いながら、わたしもこなたもお互いのチョコを食べ終える。 それを確認してから、みゆきが再び口を開いた。 「こなたよ、我が後に続いて、誓いの言葉を述べなさい」 みゆきの言葉をこなたが、その後に私が繰り返して、神への宣誓をする。 ―――そして、いよいよ式はクライマックスへ。 「指輪交換、といきたいところですが、それは数年後の楽しみにしておきましょう」 流石に指輪交換までは出来ないわね……。 「月とうさぎのように、2人が末永く時を共にせんことを……」 みゆきがにっこりと微笑む。 「さあ、歩み始めるのです―――と言いたいところですが」 みゆきがそこでこほん、と式の幕開けのとき同様に演出で咳き込んだ。 「その前に、お互いに向き合い、心で誓約の言葉を交わして下さい」 「ちょ、ちょっとみゆきさん、それはカットって言ったじゃん!」 こなたが当然慌てたように言い出す。 「どうしたの?」 「カットするはずだった場所をみゆきさんが……」 「どうしましたか?式の最中ですよ。神父である、私の指示通りにしてください」 みゆきがいつも以上ににっこりと微笑む。 「えっと、何すればいいの?いまいちよくわからないんだけど……」 私はこなたに小声で聞く。 何故かこなたは顔を真っ赤にして俯いていた。 何気なくつかさのほうを見ると、つかさもさっき以上の笑みを浮かべている。 なんなの、いったい………? 私だけ理解できていないようだった。 「―――――」 「え?」 こなたが突然小さな声で何かを言った。けど、小さすぎて聞き取れなかった。 今度は聞き逃さないように、と注意深くこなたを見る。 そしてこなたの口から、本日何度目かわからない程の吃驚単語が飛び出た。 「キス……」 「き、きキきき、キきキ!?」 「お姉ちゃん、結婚式なんだから当たり前だよ~」 そ、そりゃ、結婚式っていったら確かにそうかもだけど、でも……!! …………まだ1回もしたことないし…………。 「か、かがみ……どうする……?」 「どうするもこうするもないわよ……」 小声で話す私とこなた。 「お姉ちゃん、こなちゃん、頑張って!」 応援してくるつかさ。 「ふふ」 にっこりと微笑むみゆき。 こなたとのキス。 言われてみれば、一回もしていなかった。 ――――――――。 「そうね、こなた、せっかくの結婚式なんだから……」 「かがみ……?」 「しよっか……?」 「それ、すっごくいやらしく聞こえるよ」 「ば、バカ、キスよ、キス」 「わ、わかってるよ」 「い、いい?」 「う、うん……」 ああ、自分で言い出したのに、やっぱり意識しちゃう……。 少しずつ近づく、私とこなた。 その距離に比例して鼓動が、いつもよりもさらに速く鳴る。 こなたの顔が、もうほとんど目の前。 曖昧だけど、3センチくらい……。 こなたが瞳を閉じる。 私も、同じように瞳を閉じた。 そして、距離が―――――――――0になった。 お互いから感じられる、お互いの想いが詰まった味。 ファーストキスはレモンの味って聞くけど、私たちのそれは、とっても甘いチョコの味だった。 少しして、名残惜しい気持ちがありながらも、私とこなたの間に再び距離が出来た。 こなたの顔を見ると、真っ赤な顔で照れながら私を見つめていた。 多分、私もおんなじような顔、してるんだろうな……。 「おめでとうございます、泉さん、かがみさん」 「お姉ちゃん、こなちゃん、おめでと~~!」 つかさとみゆきが、拍手をして祝ってくれる。 「あ、ありがとう、二人とも……」 私は、恥ずかしい気持ちをなんとかこらえながら、2人にお礼をする。 「ありがと……」 こなたも聞こえないくらいの小声でそう言った。 「さあ、歩み始めるのです」 私とこなたは、自然とお互いの手を繋ぐ。 「祝福に満ちた、第一歩を………」 私たちは何も言わず、けれど同時に歩き出した。 「おめでとう~~、二人とも!」 つかさはまた私たちに祝いの言葉をくれる。 「お二人とも、本当におめでとうございます」 みゆきもいつもの口調に戻って、私たちを祝福してくれた。 「かがみん」 「どうしたの?」 「いつか本当の結婚式があげられる時はさ、私、純白のウェディングドレスが着たいな。かがみは白のタキシードを着てね」 「ふふ、いいわね。そうしよっか。そのときはちゃんと、指輪の交換もね」 「うん。つかさとみゆきさんにも、また祝ってもらわなきゃね」 「そうね。きっとつかさはラッパみたいのを吹いて、みゆきは紙ふぶきを撒いて祝福してくれるわよ。天使みたいにね」 「あはは、かがみの言ってる通りになる気がするよ」 私たちはゆっくりと並んで歩きつづける。 「ねぇ、かがみ、それとさ」 「ん、こなた?」 こなたは私のほうを向いて、顔を赤くしたまま笑顔を向ける。 「これからもよろしくね、ステキな旦那さま」 私もこなたに笑顔で返す。 「うん、この先もずっと一緒よ、カワイイお嫁さん」 ――時はうつるもの。 ――その先にある私たちの未来にうつるもの。 それは―――――『11』。 私とこなたが一緒に並んでお互いを助け合って生きていける、そんな『11』の世界。 Fin... コメントフォーム 名前 コメント 2023年になった今でも素敵な作品出会えて良かったです。 GJ!(≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-01-02 21 47 17) これ見たっけぇぇぇぇぇっ!? -- 猫好きカービィ (2021-01-24 18 36 07) いやいや、俺はなあ、2020年じゃあああ!!! -- 猫好きカービィ (2020-02-16 11 47 12) こなかがに幸あれ -- 名無しさん (2017-07-09 18 22 24) 2017…だと… みwikiさんすげぇ -- 名無しさん (2017-03-27 09 35 49) いや....俺は2014年だ!! 感動した!! -- こなみん (2014-08-17 02 15 41) とっても感動する話でした! これからも、こういう作品を作り続けてください 応援しています! まぁ・・・2013年じゃ遅い気もするけど(-。-; -- チョココロネ (2013-11-16 22 38 53) 毎度おもうが、みwikiさん結構主要キャラになってないッスか? -- 名無しさん (2010-08-14 01 30 28) 最高です…!! 本当にこうなれればいいね -- 名無し (2010-06-10 01 56 27) なんという素晴らしいハッピーエンド…感動しました -- 名無し (2010-06-02 00 11 15) 成る程これがあのメガミのピンナップのイラストに繋がって行くと -- 名無し (2010-05-18 17 48 20) あれ、なぜだか目から汗がダラダラ出てくるぞ…。 -- 名無し (2010-05-05 19 57 55) 同じく全俺が泣いた -- 白夜 (2009-12-16 23 55 45) なんだろう…さっきから頬が湿っぽい…PCの画面も妙にぼやけてるぞ? -- こなかがは正義ッ (2009-11-13 01 02 19) 全俺と表情筋ですら泣いた -- 名無しさん (2009-11-11 23 00 48) 全俺が泣いた -- 名無しさん (2009-03-11 18 22 50) 素敵なSSでした GJ☆ -- ポーター (2008-10-05 22 56 45) 感動しました -- 名無しさん (2008-10-03 21 37 01) 泣いた -- 名無しさん (2008-09-01 00 11 38) GJ 本当に将来こうなるといいね -- 名無しさん (2008-03-17 16 47 12)